改元デマ

改元デマ

[2] 改元デマは定期的に発生してきたようです。

[5] 架空の元号の一種ですが、騙されて実用して私年号化した例もあります。

定義と分類

[37] 改元デマ改元に関するデマです。

[56] しかし、

といったものまで含めるとあまりに範囲が広がるので、 元号改元のそれ自体に関係する誤情報が流布されたものに限定して 「改元デマ」 と呼ぶべきです。

[83] 改元に関係していても、 改元手続きに関係するもの (元号を決めた、など) や元号の解釈に関係するもの (元号典拠これこれどういう意味である、など) は除外するべきです。

[58] また、 「かつてこれこれの元号が使われていた」という過去の改元の情報や、 「遠くのあの国ではこれこれの元号が使われている(た)らしい」 という遠隔地の改元の情報は、 どうしても誤情報が多く含まれる性質があります。 こうしたものまで含めてしまうと対象の性格がまちまちになりすぎてしまうので、 あくまで同時代 (近過去から近未来改元についての)、 同地域で流布した誤情報 (とそれに由来して広まった情報) に限定して 「改元デマ」 と呼ぶべきです。

[76] 同地域とは必ずしも想定される施行地域でなく、 直接的に影響を受ける可能性が想定される地域くらいがいいと思われます。 例えば近くの山で蜂起して改元したらしい、という事実でない噂は改元デマと呼んで差し支えなさそうです。

[77] 改元デマは、

の1つまたは両方で構成されます。

[84] 定義: 改元デマは、 改元が行われるまたは行われたとする情報か、 改元後の新しい元号名の情報か、 それらの組み合わせであって、 改元の時期が情報の流布の時期と十分近く、 改元の実施主体と情報が流布されたコミュニティーとが地理的その他の密接な関わりを有しながらも、 改元の実施主体の発した情報に由来しないか整合しないかその両方であるものをいう。

[3] 改元が決まっていないのに改元が起こると勝手に決めつけたデマと、 改元がありそうな状況で未発表の元号を勝手に決めつけたデマに分けられるようです。

[34] ★は、近い時代の公年号の不採用案を誤認して発生した可能性のある改元デマです。

[85] ◆は、「本来公年号改元予定だったものが漏洩を理由に差し替えられた」 とする誤情報が二次的に付加された改元デマです。

[9] ▼は、誤情報を信じて実用されたと考えられ私年号にも該当する事案です。

改元デマ事例

[28] 改元デマや、それに準じる誤情報等 (改元手続き関係の同時代的な虚偽情報など) で知られているものは多数あります。

中世日本

[35] 平安時代後期の承安2(1172)年泰平万平改元されるとの噂が京都にありました。 泰平

[67] この時代に既に正規の改元伝達ルートとは別に風説としての新元号情報が流通したことがわかります。 噂された新元号を実用したとする記録は未発見ですが、 実用した者まではいなかったのか、記録が現存しないだけなのかは不明です。

[57] 平安時代末期の源平の戦いの最中、 関東源頼朝は、 平家政権による寿永への改元を当初無視していた、 と言われていました。 同様に中世にはしばしば中央の改元に従わない勢力が出現します。 近年の研究では、 朝敵であるためや社会の混乱が理由で改元伝達されなかったケースもあったと考えられています。 誤った新情報を流す改元デマとは異なりますが、 偽の新元号を「正」の誤情報とするなら、 改元情報の欠落は「負」の誤情報とでもいうべきものでしょうか。 正規の改元伝達経路の機能不全は、 改元デマを生む土壌となりました。 延長年号, 中世私年号

[33] 元号ではありませんが、南北朝時代には配月の変更綸旨のデマもありました。 正中の改暦デマ

[32] 室町時代関東地方延徳▼の私年号 (公年号延徳とは別) が広まりましたが、 改元デマでした。 延徳

[23] 戦国時代関東地方福徳▼の私年号が広まりましたが、 改元デマでした。 福徳

[36] 戦国時代関東地方で、 正京正享改元されたとの情報が記録されています。 そのような事実はなく改元デマに当たります。 正京

[71] 応仁の乱の頃の紀伊半島近辺では西軍後南朝改元したと噂されました。 改元デマが疑われます。 明応

[40] その他日本の中世私年号は多いですが、広まった多くが改元デマではないかと疑われています。 弥鹿

江戸時代

[59] 日本各地の官民の間で慶喜2年▼の私年号が使われました。 実在しない代始改元 (実際には約1年後)改元デマと考えられています。 慶喜


[24] 江戸では改元直後に紙に新元号を書き付けて売り歩く者がありました ( 改元 ) が、 中には改元デマを流布する者もありました。 改元デマは厳しく取り締まられていたようですが、 恒例化していたようです。


[74] 末頃、 陸奥宝久▼の改元デマがあり、 一部で用いられました。


[22] 享和4(1804)年2月、 文化への改元 (朝廷では2月11日) 直前の江戸では、 元明改元されたと紙に書き付けて売り歩いた者があり、 中追放に処されました。 元明


[25] 文化14(1817)年 (朝廷では翌年4月22日文政改元)江戸では、 永長改元されたと紙に書き付けて売り歩いた者があり、 入牢しました。 永長の改元デマ

[65] 天保改元された頃、 永長改元されたと紙に書き付けて売り歩いた者があったといわれます。 永長の改元デマ

[27] 天保8(1837)年加賀, 美濃, 陸奥 (福島県域) で永長▼の私年号が用いられました。 改元デマが疑われます。 永長の改元デマ


[29] 加賀の一部で天暦▼2年の私年号が用いられました。 改元デマが疑われます。 元暦

[26] 天保15(1844)年12月、 弘化への改元 (朝廷では12月2日) 直前の江戸では、 嘉政★◆と改元されたと紙に書き付けて売り歩いた者がありました。 嘉政

幕末

[55] 幕末にはいくつか私年号が出現しました。 幕末維新期の私年号 その多くは改元デマの可能性が指摘されています。

[75] 天晴▼, 天政★▼, 天星▼, 天成, 神徳▼, 延寿▼, 大化改元デマと考えられます。

[73] 神治▼, 亀光▼も改元デマが疑われます。

大正改元

[42] 大正改元のとき、 東京日日新聞大阪毎日新聞 (合併して現毎日新聞) は政府発表と異なる新元号の読み方たいせい」 を報道しました。 大正改元

昭和改元

[41] 昭和改元のとき、 東京日日新聞 (現毎日新聞) は新元号が光文★◆▼だとするフェイクニュースを報道しました。 一部で実用されました。 社長は引責辞任を表明しましたが、実行しませんでした。 後に自称関係者が実は光文に内定していたと主張したため、 令和時代に至っても一部マスコミ関係者が陰謀説を唱えています。 影響の大きさではかるなら史上最悪の改元デマ事件といえます。 光文事件

[51] 改元詔書を偽造した新聞社もありました。 京城日報改元詔書偽造事件

第二次世界大戦

[38] 第二次世界大戦の終戦アジア大陸に取り残された日本人の間で、 大新▼と改元されたとの噂が広まり、 一部で私年号として使われました。 大新

[50] この時代にはデマ以外にもいろいろな私年号が生まれました。 昭和時代の日時

平成改元

[12] 平成改元に先立つ昭和50年代頃から、 いろいろな「新元号」 の噂がありました。 次のものが知られています。 >>15

[46] 昭和時代後期の改元デマ
  • 光元
  • 知光
  • 光和
  • 承天
  • 文建
  • 大元
  • 和晃
  • 光業
  • 光輝
  • 光紀
  • 光華
  • 高輝
  • 弘文
  • 明徳
  • 弥生
  • 桜花
  • 平和
  • 和光
  • 光章
  • 昭武
  • 旭日 (あさひ)
  • 旭陽 (あさひ)
  • (ひかり)

[70] 浅羽通明が自分の周囲や雑誌記事から収集したとされます。 >>431

[47] 「ひかり」が目立ちますね。 浅羽通明は、 表面的な平穏さへの苛立ち、 平穏さを打ち破る時代の夜明けへの期待が表現され、 (一世一元下で稀にしかない) 事件としての改元のイメージと結びついていると考えました >>431

[69] 昭和天皇がご高齢になったとはいえ、死を願うように取られかねず公に語りにくいタブー感が、 逆に密かな話題の楽しみを増したものだと指摘されています。 >>431

[10] 光文事件 - Wikipedia ( 版) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%89%E6%96%87%E4%BA%8B%E4%BB%B6

昭和の次の元号は「旭日(あさひ)」「和光」であるという流言蜚語も登場した[5]

[52] 浅羽通明 memoさんはTwitterを使っています 「たとえば(一九八八年)一月二十四日付読売新聞の連載コラム、「平成―新元号を追跡」の十五回は、兜町、印刷、広告、事務用品の各業界、政界に流れたうわさとして、→」 / Twitter (午後8:50 · 2016年7月13日 , ) https://twitter.com/asaba_memo/status/753194895137910785

[53] 浅羽通明 memoさんはTwitterを使っています 「→光元 知光 承天 文建 大元 和晃 光業 光輝 光紀 光華 高輝 弘文 明徳 弥生 桜花 平和 和光 という「昭和の次の元号」が報告されている。」 / Twitter (午後8:50 · 2016年7月13日 , ) https://twitter.com/asaba_memo/status/753194932500766720

令和改元

[1] 令和改元の頃新元号が安久だとするデマ騒ぎがありました。 他にも「安」が入るというデマが数種ありました。 安久

[60] 平成改元前の「ひかり」といい、時代の空気のようなものが現れているのかもしれません。

[10] 「新元号『悠久』って本当ですか?」国民民主の議員「令和」公表前にツイート→削除 () https://www.buzzfeed.com/jp/ryosukekamba/yukyu

[6] ネットに現れた未来人たちの予言した年号はことごとく外れた事象に対して「平行世界の住人」「禁則事項」「政府が予言を知って変更」などの説が乱立 - Togetter () https://togetter.com/li/1334279


[68] の新元号発表直後から、 当時の内閣総理大臣安倍晋三を嫌ういわゆる反アベの人々を中心に、 令和の意味や出典を曲解して貶める動きが見られました。 令和改元

[61] デマという程ではありませんが、 令和の発表直後に一部海外メディアが偏った意味で解説した記事を海外に配信したため、 日本政府外務省が公式の英語説明を発表する事態となりました。 令和改元

[86] 英語説明は今後慣例となりそうです。 改元手続き

[8] 時を経るに従ってエスカレートし、 新元号の偽の由来を考案して披露するデマがしばしば流されるようになりました。

[63] 栄和, 令和改元統一教会陰謀論も参照。

[66] >>64 陰謀論放射脳デマ反ワクチンのいつもの組み合わせ!

[87] 安久のような広範囲に広まった改元デマには一般の人々も関わっているので事情が複雑なのですが、

  1. [88] 安久をはじめとする虚偽の改元情報に基づいた政権批判
  2. [89] 未知の新元号に関する根拠のない予想に基づいた政権批判
  3. [91] 令和改元の一連の手続きに関する虚偽の情報に基づいた政権批判
  4. [92] 令和という元号名に関する虚偽の解釈に基づいた政権批判

... と時期によってデマの内容は変化しつつも、 特定の思想や陰謀論を信じる同じような人達が同じような主張を展開しているようにみえます。

[90] 従来型の改元デマとは少し性質が違って、近年増加しているといわれる 「自分達の主張の正当化のためならデマでもなんでもいい」 タイプの過激な人々の素材にたまたま時勢柄改元が選ばれたということでしょうか。


[93] 改元そのものについてのデマではありませんが、 日本共産党キリスト教極左団体に関係する「市民」グループなどが 「政府に元号を強制されている」 などとするデマを流しています。 裁判で主張が却下されても活動を続けているようです。 こうした主張は以前から日本共産党が行っていましたが、 令和改元を機にまた出現するようになりました。 元号廃止論

[94] こちらの主張の人々は元号 (と天皇) 全体を嫌っているので、 (最終的に反政府活動に行き着くところは同じでも) 改元デマ改元経緯デマの人々とは重なっていないようです。

令和時代

[48] 令和元年になってからの天災や凶悪事件、 令和2年のコロナウイルス騒ぎ、 令和2年の天災と事ある毎に、 もう一度改元しろと言って騒ぐ人が SNS に現れますね。 どこまで本気か知らんけど。 これは改元デマが生まれる素地ができつつあるのかも。

[49] 【超速報】改元決定, 2020/07/18(土) 16:16:59.39, , http://tomcat.2ch.sc/test/read.cgi/livejupiter/1595056619/

関連

元号以外の日時関係デマ騒ぎについては架空の日時標準時改正デマ夏時刻ジョーク

[72] 取越正月

[4] 新元号予想改元デマは紙一重なので注意しましょう。

[7] 改元にまつわる詐欺もあります。 改元かるた

[31] 他国の歴史書に残された実在しない元号 古代年号白亀周啓

メモ

[43] 中世、近世の未発掘の改元デマ事例はまだまだありそう。

[11] 「改元デマ」でぐぐると1位が安久、 2位が光文で草www

[17] 平成改元でも令和改元でも、 陛下がご高齢になった頃に新元号のデマが生じるのは興味深い。

[18] 別に陛下の死を願ってデマを流しているのではないだろうけど、 一世一元の負の側面のようにも思える。

[19] たぶん延長年号中世私年号改元デマ、 新元号予想あたりは地続きの現象として総合的に考察する必要があるのでしょうね。

[44] 最初の私年号が出現する平安時代終わり頃に改元デマも出現しているのに注目したい。

[20] 平成末期、おそらく東日本大震災の頃から、 改元と大仏建立が必要だ、みたいなネタが Twitter とか、 Web 系の会社の社員とかの間で何度か盛り上がりましたよね。 だから改元デマの発生とか、 中世私年号が世直し改元願望から発生した説とか、 なるほどありそうな話だという実感があります。

[21] 実のところ Twitter の表示とか、 IT 系でも特に Web 系の会社とかは元号じゃなくて西暦を扱うのがほとんどじゃないですか。 だから元号なんて関係ないはずなのに、 改元を切望する。 もちろんただのネタなので、ほとんどの人は面白がってるだけで真面目に改元努力をしている人などいないでしょうけど、 日本の歴史の積み重ねが時代の最先端の分野までつながってるのが興味深いし、 中世私年号も元号自体より改元という事実が重要だったという指摘が現代に重なっておもしろい。

[39] 中世はどうだかわかりませんけど、江戸時代に江戸で流行ったような改元デマは、 きっと平成や令和の人々と同じで、 天災などの社会不安、 政治への不満とか風刺で改元があるのではないか、 新元号が何だろうとネタで話していたのがエスカレートしたものだったのでしょうね。

[62] 現代の中華人民共和国ベトナムでも風刺の私年号が発生しているのも興味深いです。 中華人民共和国ベトナム元号を使っていないので改元デマにはなり得ないのですけど。 中華人民共和国の私年号, ベトナムの私年号 それらは風刺性が強く、 日本改元デマは自然災害との結びつきが強そう、という違いはありますけど。