紀年法

紀年法とは何かを考える

[2] に呼称を与えたを指す用語として、 紀年法紀元紀年era などがあります。 いずれもよく使われている用語でありながら、 厳密な意味がはっきりしないところがあります。 書物によって説明された意味が違っていたり、 当てられた訳語の意味が少しずれていたりします。

[185] 本項では、まず紀年法的な用語がどのように定義されてきたかを確認します。 その上で、 “紀年法的なもの” の記述のための基礎的な概念を定義し、 それをもって “紀年法的なもの” の厳密な議論に資することを目的とします。

紀年法の諸定義

[186] まず、 辞典類や専門書、学術論文等で紀年法やそれに類する概念がどう説明されているかをみていきましょう。

定義㋐

[161] 定義の類型㋐は、「の表し方」と広く説明するものです。

[3] ㋐-1 日本語ウィキペディア紀年法記事は、 「紀年法」 とはの表し方だとしました。 >>77

[21] ㋐-2 中文维基百科纪年記事は、 「纪年」と「纪元」は暦法におけるの表し方だとしました。 >>40 ただし「纪元」については単独記事で別の説明をしていました (>>20)。

[66] かつて EnglishWikipediacalendar era は、 「calendar era」 は暦法におけるの数え方だとしました。 >>78

[4] 「紀年法」「紀年」の字義を鑑みれば、㋐は1つの妥当な説明でしょう。

[5] しかし紀年法としてあまり紹介されない次のような例を、 どう考えるべきでしょうか。

  • [6] スローガン的元号 e.g. 「今年はVR元年になる」「国際宇宙年」
  • [7] ある出来事からの周年 e.g. 「創業10周年で改装した」
  • [8] ある人の年齢 e.g. 「22歳の4月に結婚した」
  • [9] ある人の学年 e.g. 「小学5年の8月30日の日記」
  • [10] 相対表記 e.g. 「一昨年の4月17日から」
  • [97] 年度名 e.g. 「平成15年度 2月行事予定」 「FY2006/07から増収が続いた」

[39] ㋐-1によればこれらが除外される理由はないはずです。 ㋐-2は「暦法の」と限定するためいくつかは除外されるかもしれませんが、 それにしてももう少し厳密な定義がなければ、例えば 「戦後81年」が紀年法なのか判断に困ります。 「暦法の年」や「暦年」のような修飾はこの他の説明にも時折現れますが、 その意図するところは不明瞭です。

[44] 「暦法の」と限定する EnglishWikipedia の説明は、 紀年法暦法から独立して存在し得ないとの考え方 (>>23) に基づくとも思えます。 一方日本語Wikipedia は記事内で紀年法暦法と独立であると説明していました >>77

[227] まとめると、㋐はおおむね妥当と考えられるものの、 指し示す範囲が広すぎるようにも思われること、 暦法との関係が明瞭ではないこと、 の2つの課題があります。

[78] Calendar era - Wikipedia, https://en.wikipedia.org/wiki/Calendar_era

A calendar era is the year numbering system used by a calendar. For example, the Gregorian calendar numbers its years in the Western Christian era (the Coptic Orthodox and Ethiopian Orthodox churches have their own Christian eras). The instant, date, or year from which time is marked is called the epoch of the era. There are many different calendar eras.

変更後: >>56
[77] 紀年法 - Wikipedia, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%80%E5%B9%B4%E6%B3%95

紀年法(きねんほう)とは、年を数えたり、記録する方法をいう。

[40] 纪年 - 维基百科,自由的百科全书, https://zh.wikipedia.org/wiki/%E7%BA%AA%E5%B9%B4

纪年,或称纪元,是指历法中的年份命名体系,例如格里曆(公历)所使用的基督纪年(公元),中国农历使用的干支纪年等。世界各地曾存在过各种不同的纪年方法,其中一些至今仍在使用。

定義㋑

[162] 定義の類型㋑は、「をあるからの経過年数で表すもの」 と説明するものです。

[58] ㋑-1 日本の多くの一般向けの辞書に加え、 暦と時の事典日本年号史大事典 までもが、 「紀年法」 とは元期から年を数える方法だと説明しました。 >>83, >>84, >>79

[15] ㋑-2 日本語Wikipedia紀元記事は、 紀元とは紀年法のうち、 元期からの経過で年を無限に数えるものと説明しました。 「無限に数える」ことで元号と区別していました。 英語「era」、 中国語「纪年」に対応するとしていました。 (が㋒-2の意味も併記していました >>16) >>77, >>14

[158] ㋑-3 나무위키기년법 記事は、 기년법 (紀年法, calendar era) とは特定の年 (元年) を起源に日数を数える方法と説明しました。 そして年号も含まれるとし、 現時点で使われる紀年法は常に陽数であると指摘しています。 >>91

[59] 各書とも技術的に厳密な説明とはいえないところがあり、 解釈の余地があります。表現の微妙な違いで当てはまったり、 当てはまらなかったりするケースもあるかもしれません。

[25] 日本大百科全書(ニッポニカ)紀年法は、本文でいくつか具体的な紀年法を列挙していました。 なぜか元号は挙げていませんでしたが、 「干支紀年法」の説明中に即位紀年元号に言及がありました。 定義上各元号も該当しそうなもので、 しかも言及されているので漏れではないということは、 紀年法と考えていなかったのでしょうか。 しかし別項年号には紀年法の一種とありました。 矛盾はないですが、不自然です。

[24] ブリタニカ国際大百科事典紀年法の本文に 「東洋諸国には王朝ごとに短期間の紀年法があり,これを元号もしくは年号と呼んだ。中国では元号と干支紀年法が盛んであったが,紀元に相当するものとしては」 とあり >>79干支年と各元号紀年法としていましたが、 それらは紀元でないと解釈したように読めます。 紀年法元期紀元と呼ぶという自身の定義 >>31 と矛盾しています。

[61] 世界大百科事典コンスルは、 ローマ執政官紀年法紀年法と説明していました。 >>79

[32] 紀年法の字義からして、これら紀年法らしきものを紀年法に含めないべきとは思えません。 これら紀年法らしきものが㋑から漏れるとするなら、 ㋑は紀年法の定義として不適切と考えられます。

[163] また紀年法の字義からして、

も注意するべきポイントです。 を単位とする手法や、 超年的時間範囲とその範囲内の数の組み合わせによる手法が該当するのか否かが、 明瞭とはいえません。

[187] ㋑は紀年法部分集合の定義として分類には有用かもしれません。 ただし、そのためにはある紀年法が所属するかしないか曖昧なく判定できる、 より厳密な定義が必要です。

[228] まとめると、 ㋑は「紀年法」の説明とも「紀元」の説明ともされるものの、 「紀年法」の説明としては指し示す範囲が狭すぎると思われること、 定義が曖昧であること、 の2つの課題があります。

[83] 暦と時の事典 p.53

きねんほう 紀年法 歴史上の一定の時から年数を数える方法のことで、

[84] 日本年号史大事典

普及版 p.12

紀年法とは、特定の年を定めて年数を数える方法であり、

[79] 紀年法(きねんほう)とは - コトバンク, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,世界大百科事典 第2版,日本大百科全書(ニッポニカ),世界大百科事典内言及, https://kotobank.jp/word/%E7%B4%80%E5%B9%B4%E6%B3%95-51302

紀年法 きねんほう calendar; calendar systems

国や民族の歴史を計算する際,起算の年を定めて紀元として計算する方法。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

紀年法【きねんほう】

特定の年を紀元と定め,それから起算した経過年数で年代を表示する方法。

出典 株式会社平凡社 百科事典マイペディア

きねんほう【紀年法】

過去のある年を起点として年を通算する方法で,起点となる紀元元年は宗教的,軍事的,政治的事件に基づいて設定される。

出典 株式会社平凡社 世界大百科事典 第2版

紀年法 きねんほう

年を単位として、経過した時を年数をもって数える方法をいう。このためには、ある起算の時点を必要とする。これを「紀元」といい、起算点である紀元から連続して数えた年数が紀元年数である。 [渡辺敏夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

[14] 紀元 - Wikipedia, , https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%80%E5%85%83

紀元(きげん)とは、ある出来事が起こった年を始点として、それから何年経過したかで時間を測定する、無限の紀年法である。

[91] 기년법 - 나무위키, https://namu.wiki/w/%EA%B8%B0%EB%85%84%EB%B2%95

기년법(紀年法, calendar era)은 특정한 연도를 기원으로 하여(원년) 그로부터 햇수를 세는 방법이다. 기원의 근거에 따라 정치적 기년법, 종교적 기년법, 천문학적 기년법 따위가 있다. 연호도 왕들의 즉위 해를 기준으로 한 일종의 기년법이라고 할 수 있다.

定義㋓

[73] 英語「era」は一般語としては時代、 すなわち何らかの意味付けされた時間の範囲のような意味合いとされます。 「紀年法」のようなを識別する機能は必ずしも要求されない語です。 「calendar era」のように修飾するのはその辺の区別が意識されているのでしょう。 ただし「calendar era」とあってもの単位で番地付けされるとは限らないことには注意が必要です。

[75] ㋓-2 ISO 19108 の 「calendar era」, 「暦年代」, TM_CalendarEra は、 中で元期から長さを数える期間と定められました。 TM_CalendarEra 即位紀年や各元号の他、 「ユリウス暦におけるキリスト紀元行用期間」 「GPS暦始まって以来」 のような期間も表せるものとされます。

[17] ㋓-1 日本語版 Wikipedia紀元は、 英語 「era」の語源はラテン語 「aera」で、 元期から始まる年代と説明しました。 >>14

[52] ㋓-1 PolskiWikipediaEra kalendarzowa は、 元期から始まる期間と説明しました。 >>49

[74] 「era」は元号の英訳にも使われます。 元号紀年法としての機能を持ちつつ、 時代区分としてのニュアンスをも持っています。 ただしそれは元号でない紀年法も同じで、 「西暦の時代」のような言い方をしたり、 「紀元何千年」を建国以来何年の意味で使ったりするのも同趣旨でしょう。 それ故に元号の英訳を「finite era」とし、 元号でない「era」と区別しようとするものもあります。 元号

[188] ㋓は紀年法を包含する概念 (ないし紀年法の小さくない部分集合を包含する概念) のように思われます。 そのまま紀年法の定義とするには広すぎます。 せめて「年」を単位とする概念に限定する必要があります。

[49] Era kalendarzowa – Wikipedia, wolna encyklopedia, https://pl.wikipedia.org/wiki/Era_kalendarzowa

Era kalendarzowa – okres zapoczątkowany jakimś ważnym wydarzeniem (rzeczywistym lub legendarnym), który stanowi podstawę rachuby lat w kalendarzu.

Google翻訳:

The calendar age - a period initiated by some important event (real or legendary), which is the basis for the calculation of years in the calendar .

There are short and long ages .

定義㋕

[62]EnglishWikipediaCalendar era 記事は、 「元期からの経過期間、ただし次の元期まで」 と説明しました。 >>56

[63] この定義は、但し書きを除けば㋓に相当します。 但し書きは日本の元号を説明するために挿入されたものでした >>57。 この改変はやや強引感があります。

[50] ㋕に個別の各元号は該当しますが、 「日本の元号」のような元号系は該当しないはずです。 ところが EnglishWikipediaCalendar era には「Japanese calendar」 や各国の即位紀年も挙げられていました >>56 個別の元号をここにすべて載せるわけにもいかないので、 1つにまとめたのかもしれませんが、 そうであるなら 「calendar era」 の説明として明瞭さを欠いていると言わざるを得ません。

[230] 日本の元号のような元号系が該当するとなると、 「次の元期まで」 という定義と遡及年号延長年号の関係をどう考えるべきかが問題となります。 元号系元号は実はきっちり切り替わるのではなく、 前後が重なり合った状態にあります。 ㋕はそれを表現できているか疑問です。

[64] 年を数えない手法は㋕に該当しないはずです。 ところが EnglishWikipediaCalendar era 記事にはローマ執政官紀年法が挙げられていました >>56。 あるいは毎年が次の「元期」に該当すると考えれば、該当するともいえるでしょうか。

[51] ㋕に循環型の手法は該当しないはずです。 ところが EnglishWikipediaCalendar era 記事には 「indiction」 が挙げられていました >>56。 あるいは循環のたびに次の「元期」に到達すると考えれば、該当するともいえるでしょうか。 しかし干支年十二支年は挙げられていません。

[65] ㋕には以外のものも該当し得ます。 EnglishWikipedia にはユリウス日数Unix time が挙げられています。

[229] ㋕にはその他のものも該当し得ます。 例えば年の通日年始からの経過日数を使ってを識別する手法ですが、 毎年の年始元期と考えると、 indiction 同様に循環型の手法といえます。 しかし EnglishWikipedia には挙げられていないので、どう考えているのかわかりません。

[189] まとめると、 ㋕は㋓と同じく (>>188) でないものが含まれること、 1期間を指すのか全体を指すのか、どちらをも指し得るのか明確でないこと、 1期間とし得る範囲が明確でないこと、 重なりを扱えないこと、 といった課題を抱えています。

[56] Calendar era - Wikipedia, https://en.wikipedia.org/wiki/Calendar_era

A calendar era is the period of time elapsed since one epoch of a calendar and, if it exists, before the next one. [1]

[1] Richards, E. G. (2013). "Calendars". In Urban, Sean E.; Seidelmann, P. Kenneth (eds.). Explanatory Supplement to the Astronomical Almanac (3 ed.). Mill Valley, CA: Univ Science Books. ISBN 1-891389-85-8.

[57] 出典追加後に定義文が改変されている: Calendar era: Difference between revisions - Wikipedia, https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Calendar_era&diff=935293278&oldid=935287610 ... ので、この出典の定義と一致しているかは怪しい。
[38] 変更前: >>78

定義㋔

[96] やや説明的ですが、英語で「year numbering」との表現があります。 天文学的紀年法英語Astronomical year numbering です。

[42]EnglishWikipedia西暦2004年から西暦2007年まで立項されていた Year numbering は、 暦年を固有に識別するべく暦年整数を割当てたものとしていました。 記事本文は暦法ごとに、 グレゴリオ暦ADBCイスラム暦AHBH といった形で説明していました。 >>41

[43] 当記事はその後 Calendar era に統合され、 「calendar era」は「year numbering」系である、と説明されました >>78

[45] ㋔は「固有の整数」とかなり限定的に定めています。 循環型の手法は除外されますし、 第1年を「元年」と呼ぶ東洋の手法も解釈によっては除外されます。

[46] 逆に、カウントダウン型紀年法が明確に該当するのはもちろん、 年番号を無作為に割り当てたものすら該当し得ます。

[231] まとめると、 ㋔は「紀年法」の指し示す範囲として狭すぎます。 定義が明確なので「紀年法」の部分集合の定義としてならいいでしょう。

[41] Year numbering - Wikipedia, https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Year_numbering&oldid=109013729

Year numbering is the assignment of integers to calendar years for the purpose of uniquely identifying the years.

定義㋒

[13] ㋒-1 「紀年法」の意味を㋑とするものの多くは、 元期たるが「紀元」だと説明していました。 >>79, >>31

[20] ㋒-1 中文维基百科纪元は、 元期たるだとしていました。 具体的には元号元年が該当するとしていました。 >>19 ただし纪年記事では「纪元」は「纪年」と同義とされていました (>>21)。

[16] ㋒-2 日本語Wikipedia紀元は、主たる意味を㋑-2としつつ (>>15) も、 元期たるをも紀元暦元と呼ぶとしていました。 英語 「epoch」は元期を表し、日本語の「紀元」の㋒-2の意味で、 中国語では「紀元」だとし、 日本語版記事紀元英語epoch中文纪元に対応するとしました。 >>14

[47] ㋒-2 かつての EnglishWikipediaCalendar era は、 「epoch」は元期たる瞬間、日付、年としていました。 >>78

[34] ㋒-2 デジタル大辞泉日本国語大辞典紀元は、 元期または元期たるとしていました。 >>31

[18] 日本語Wikipedia紀元は、 実例のリストに年を数える方法をいくつも示していましたが、 唯一 「UNIXエポック」だけ、 「UNIX時間における紀元」 として示していました。 >>16 年を数える方法は㋑-2 ㋒-2のどちらの定義にも合致するものでしたが、 UNIXエポックだけは㋒-2に限定されるものでした。

[33] ブリタニカ国際大百科事典紀元は、 建国年、開宗年、国の経過年数の基準年だとしていました。 >>31 1つ目、2つ目は年を数える手法とは無関係に存在しそうです。派生義でしょうか。 3つ目は㋒に近いですが、なぜか建国紀元に限定されています。

[31] 紀元とは - コトバンク, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,デジタル大辞泉,百科事典マイペディア,精選版 日本国語大辞典,日本大百科全書(ニッポニカ),世界大百科事典内言及, https://kotobank.jp/word/%E7%B4%80%E5%85%83-50242

紀元(読み)きげん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

国家や宗教を建てた最初の年,また一国の経過した年数を数えるもとになる年をいう。 (→紀年法 )

デジタル大辞泉の解説

1 歴史上の年数を数えるときの基準。また基準となる最初の年。

2 年号を建てること。建元。改元。また、年号。

百科事典マイペディアの解説

歴史年代学の紀年法の基準となる年。国家や民族が過去に経過した年を算定する基準となる年で,ふつう政治的・社会的・宗教的な重要事件のあった年をあてる。

精選版 日本国語大辞典の解説 〘名〙

① 歴史上の年数をかぞえる時の基準。また、基準となる最初の年。

② 元年を記すこと。年号を建てること。建元。改元。

③ 年号。

④ 物事のはじめ。

[19] 纪元 - 维基百科,自由的百科全书, , https://zh.wikipedia.org/wiki/%E7%BA%AA%E5%85%83

纪元,指历史纪年的起算年代。现在世界上大多数国家采用公历及公元纪年,历史上曾存在多样的纪元方式。

[184] 暦Wiki/要素/1年とは?/紀元 - 国立天文台暦計算室, , http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/CDD7C1C72F1C7AFA4C8A4CFA1A92FB5AAB8B5.html

紀元とは、年を数える際の基準となるものです。

定義㋗

[35] ㋗-1 デジタル大辞泉日本国語大辞典紀元は、 建元改元の意味としていました。 >>31 名詞とされていますが、サ変動詞的な用法のようです。

[36] ㋗-2 デジタル大辞泉日本国語大辞典紀元は、 元号の意味としていました。 >>31

[37] ㋗-3 日本国語大辞典紀元は、 物事のはじめの意味としていました。 >>31 スローガン的元号につながる用法でしょう。

[67] 東洋の日時表示では、元号名に「紀元」が添えられることがありました。 元号紀元

[68] 前近代には「紀元」は改元元年元号と同じような意味で使われることがあったようです。 それが西暦皇紀にも適用範囲が拡大され、 いつしか元号でないものばかりが紀元と呼ばれるようになったのでしょうか。

[69] 現在では「紀元」と元号は違うとすることも多いとはいえ、 その区別が安定しているとはいえない状況で、 しかも歴史的根拠が薄いとなれば、 それに固執する必要もないかもしれません。

定義㋕

[23] 紀年法に限定せず広く暦法時刻法の範疇まで含んだ意味だとするものもありました。 を特定して数えるためにはの下位の月日を画定させる必要が生じますから、 確かにそれも一理あります。

[55] 「紀年」は歴史研究の分野では「紀年銘」のように日付表記を指す意味でも使います。 此の場合それは必ずしもの表示に限定されず、 もあればそれも含めて指します。 (古い史料ならだけでも書かれていれば御の字という事情もあるのでしょう。) 情報分野のタイムスタンプ (「時刻」と言っていますが、の単位まですべて含んでいます。) に近い意味といえます。 すると暦法時法まで含めて「紀年法」と呼んだとしても、 むしろ意味が整合するとも言えます。

[53] NederlandsWikipediaJaartelling 記事は、時刻を計算して々の形に体系化する時刻計算系と説明しました。 >>48 を所与のものとする他の定義よりもややの構成に焦点が当たっています。 ただ本文は紀年法暦法の区別に注意を促していますから、 定義とはややずれがあるようです。

[70] 日本大正時代の解説論文 中世の紀年法大意 は、欧州日時制度を日、月、年の順に解説したものでした >>71。 ㋕ この題名と内容から「紀年法」にはより下位も含まれるようにも解されます。 ㋐-2 ただその本文中で「紀年法」と書いているのはを説明した章で、 そこでは年を示す方法だとしていました。

[54]日本紀年法研究者佐藤正幸は、 「紀年法」は一般には時間計測系を指すとしました。 ㋐-2 しかし考察の対象から科学的な紀年法は除外し、 さらにを数える系に限定したものが 「紀年法」だとしました。 ㋖ しかもそれに元期たるが伴うとしました。 >>81 つまり広義狭義の3段階を設定しましたが、 このうち最後の条件㋖は年を数えるには必須のものだといいますから、 ㋐ = ㋖と認識していたのかもしれません。 この狭い方の定義に干支年ローマ執政官紀年法が含まれるのか定かでありません。

[22]コトバンク紀年法は、 対応する英語を 「calendar」 と 「calendar systems」としていました。 >>79 そこに含まれるどの辞書もこの英語に見合った説明を与えていないので、 この英訳は不審です。

[72] 結局「紀年法」をより細かな構造も含めるとしたところで、 実際にはとその他を区別して扱うことになるようです。 それならはじめからの部分だけに限ってしまって良さそうに思えます。

[81] 日本における紀年認識の比較史的考察

紀年法は、一般に、「時間を計測するシ ステム」と定義され、天文学的 (科学的) 紀年法と、歴史的紀年法とに分類される。 本稿は、後者についての考察であるが、そ の中でも、主として「年を数えるシステ ム」について焦点をあてており、暦につい ては必要な場合にしか言及しない。暦に関 しては、既に多くの優れた研究が行われて いるので、それらを参照されたい。「一年 を決定する方法」と、「決定された一年を どの様に取り扱うのか」ということは、本 来別の問題だからであり、両者の明確な区 別は、紀年法の政治的・ 歴史的役割を考え る上に、必要不可欠である。

従って、本稿で扱う紀年法は、「年を数 えるシステム、或いは歴史上の年を数える システム」とまず定義したい。次に、これ に、「年を数える最初の年である『起算年 (起年) 』を伴った」と付け加えることが必 要となる。つまり、「年を数える」ために は、或る年を「少なくとも理論的に」特定 できなけれぽならないからである。皇帝や 国王の即位紀年は、面倒ではあるが、理論 的には年を特定できるし、オリンピアド紀 年も、第何回目のオリンピック後何年と年 を特定できることを、思い浮かべて欲しい。

[48] Jaartelling - Wikipedia, https://nl.wikipedia.org/wiki/Jaartelling

Een jaartelling is een systeem van tijdrekening waarbij men de tijd rekent en opbouwt in jaren. Door jaartelling is het mogelijk aan te geven wanneer een bepaalde gebeurtenis heeft plaatsgevonden. Jaartelling is dan ook van groot belang in geschiedschrijving.

Google翻訳:

An era is a system of time calculation in which time is calculated and built up in years . By era it is possible to indicate when a certain event has taken place. The era is therefore of great importance in historiography .

その他紀年法分類

[60] 中世の紀年法大意 は、 即位紀年 (regnal year) 、 一定年数を反復する周期 (cycle) 中の位置、 紀元 (era) からの一連年中の位置の3種類の紀年法に分類していました。 >>71 ローマ執政官紀年法即位紀年型に分類していました。

[11] 日本語Wikipedia は、 紀年法が 「ある年を始点にして、経過年と遡及年を数える無限のシステム(紀元)」、 「リセットされる有限のシステム(元号)」、 「一定の年数で繰り返される循環式システム」 の3種類に分けられるとしました >>77。 この分類法ではローマ執政官紀年法がどこに該当するか不明ですが、 記事中で紹介もされていませんから、対象外なのかもしれません。

[12] 日本語Wikipedia は、 紀年法とは 「元年と1年経過するごとに加算する原則があるのみで、元日は定義しない」 と暦法との区別を説明していました。 >>77 厳密に言えば干支年のような元年を持たない 「循環式システム」 を考慮していない Wikipedia のこの説明は矛盾しています。

[183] 太陽暦太陰太陽暦紀年法が想定された説明が多いようですが、 太陰暦紀年法との関係性をどう理解したものか。 宇宙の日時の記述に使われる地球以外の天体での紀年法の扱いにも不明な点が残ります。

広義の紀年法と紀年法の成熟度

[98] ここまで、いろいろな用語とその意味の説明を見てきました。 いくつかの説明はを対象とし、 いくつかの説明はもそうでないものも対象としていました。 どちらもそれが有用な場面があるのでしょう。 ここではを対象とするものを考えます。

[99] いろいろな “年を表す手法” をそれぞれの説明に当てはめたとき、 該当するものとしない(かもしれない)ものが出てきました。 ㋐-1が最も緩い説明で、年を表すいろいろな手法がすべて該当しそうです。 そして字義との対応関係から「紀年法」という語がそれに最も相応しいように思われます。 他の説明は、年を表すいろいろな手法の1分類の説明とは言えるかもしれませんが、 総称的な概念とするには不足します。

[100] ただし㋐-1はむしろ意味が広すぎて、 区別して扱いたいものまで含めてしまっている疑いがあります (>>5)。 どこかに線を引いて意味を狭められるものかどうか、 境界的な事例を検討してみます。

[101] の性質を表すに過ぎないものは、 年を表す手法とはいえないと考えられます。 例えば 「今年はインターネット元年になる」 というとき、「インターネット元年」は年を識別するためではなく、 年の性質を記述するために使われていますから、 年を表す手法の利用例とはいえません。

[102] ただし 「インターネット元年から5年が経過した」 というなら、 「インターネット元年」は年を表す性格を帯びています。 このことは、 文脈を無視して語だけ取り出したとき、 それが年を表す手法の利用例かどうか評価できない可能性を示唆します。

[103] ではないものを指すものは、 年を表す手法の利用例とはいえません。 例えば 「平成7年7月7日で創業21年」 というとき、 「創業21年」 は経過年数を表し、 「平成7年」という年ではなく 「平成7年7月7日」という日に結びついています。

[104] ところが「今年は創業30年」とか「創業20年目のキャンペーン」 のように言い出すと、年を表す性格が出てきます。 でも年を識別するというより年の性質を記述したもののようにも感じられます。

[105] 「創業21年の2月3日」のように日付の表記にまで使われると、 年を識別する機能を担っていることが明らかです。

[106] カレンダーに 「平成7年」「1995年」と並んで「創業21年」 と書いてあるときはどうでしょうか。 平成西暦と並列の年を識別するものと解釈できますが、 年の性質を記述したもののようにも感じられます。

[107] 年表に 「和暦」「西暦」欄と並んで「創業年」や「年齢」の欄があるときはどうでしょうか。 「和暦」や「西暦」を隠しても表として成立するなら、 それはもう年を識別する機能を担う値と言って差し支えないように思われます。

[108] 国家の設立年や君主の誕生年が日付の表記に用いられる例を考えると、 こうした事例は年を表す手法として確立していく過程を捉えているとも思われます。 だとすると、発展途上の曖昧な段階のどこかにここまでは年を表す手法、 ここからはそうではない、と明確な線を引くのは難しいかもしれません。

[109] 発展の過程に線を引く方法として、例えば、

... のような基準が考えられますが、 金石文の銘文で1例しか発見されていないようなものが基準に当てはめられなくなるなど、 一律に適用するのは難しさがあります。

[116] こうした基準を使って機械的にこれは年を数える手法で、これはそうではない、 と定めていくのは無理がありそうですし、 仮に何らかの基準を明文化したところで、従来明確な定義なく何となく共有されている 「紀年法とはこういうものだ」 という概念に一致しなくなってしまうおそれがあります。 一般的な観念と違う基準を新たに設けてもあまり意味がありません。

[117] 「紀年法」の範囲を狭く定めるためのものとしてではなく、 広義の「紀年法」に属する個々の紀年法について、 こうした基準を使って紀年法の成熟度のようなものを測ることには意味があるかもしれません。

[119] 日付を扱う情報システム和暦西暦を処理できる必要があることは自明です。 でも他にも紀年法はあります。 「すべての紀年法」 のような集合を定められないとしたら、どうしたらいいでしょうか。

[120] 「すべての紀年法」の集合は決められないとしても、 紀年法の成熟度を測って 「広く使われている紀年法」の集合なら決められそうに思えます。

[190] それでは「広く使われている紀年法」の全部に対応すればそれで十分でしょうか。

[121] 社史編纂システムなら、その会社の創業年数や決算期、 創業者の年齢のようなものも紀年法として使いたくなるかもしれません。

[191] 紀年法の成熟度が低いとしても、局所的な需要は高いことがあります。 「広く使われている紀年法」以外の紀年法にも対応できる、 拡張可能な設計が望まれます。

[192] そのためには、「広く使われている紀年法」以外も含め、 紀年法とはいかなるもので、どのような性質を示すのか、 要件と特徴の理解が重要となります。 従来のような個別の紀年法の研究にとどまらず、 紀年法クラスに対する一般化された分析が求められます。

近現代日本の私年号, アメリカ建国紀元, チェルノブイリ紀元, 道暦, 啓統紀元, 檀君紀元, 통일염원, 広布決戦場

紀年法の一般形の形式的定義

[123] 前節の検討を踏まえ、 ここでは㋐-1をベースに、シンプルに 「を表す方法を「紀年法」と呼ぶ」 と考えることにします。

[193] 言い換えると紀年法とは、 あるを思い浮かべた時、 それを指す“名前”を提供してくれる関数を持つものです。

[194] しかも、そのような“名前”からそれが表すを思い浮かべられなければ、 コミュニケーションは成立しないのですから、 その逆関数もまた紀年法に不可欠な要素といえます。

[82] それを、

... という条件を考慮すると、次のように記述できます。

[195] 紀年法 (year naming scheme, YNS) N は、

N = ( NamesN, ToYearN, ToNameN )

n ∈ NamesN, ToYearN (n, X) ∈ { CY }

n ∉ NamesN, ToYearN (n, X) = CΦ

yY, ToNameN (y, X) ∈ { CNamesN }

... と表せるものとします。

[199] 関数 ToYearN, ToNameN の結果は、 ちょうど1つに確定できるケースもあれば、 候補が見つからないケースや複数候補から決められないケースもあります。 複数の候補は同格とは限らず、確からしさ等の情報も得られることがあります。 ここではそれらを一括して候補関数として記述することにします。


[196] なお、すべての集合 Y については、 暦法との関係が複雑なのでここでは深くは立ち入らないことにします。

[234] 多くの場合、紀年法によって記述される集合 Y全順序集合です。 不等号 <, >, , はその全順序関係によるものとします。

[235] 全順序集合たる集合 Y における y について、 前のy - 1、 次のy + 1 と書くことにします。 すなわち、

[236]y1Y, ∀y2Y, y1 - 1 = y2y1 > y2 ∧ ¬ (∃y, y1 > y > y2)

[237]y1Y, ∀y2Y, y1 + 1 = y2y1 < y2 ∧ ¬ (∃y, y1 < y < y2)

... とします。

候補関数

[203] 集合 X候補関数 (candidate function) CX (x) は、

  • [216]xX? について CX (x) は x の候補としての性質を示す値を返す
  • [215]xX? について CX (x) は候補であり得ないことを表す値を返す
  • [205] X? = X ∪ { null }
  • [206] null集合 X のどの要素も該当しないことを意味する値

... という条件を満たすものとします。

[209] CX (x) はこの条件を満たす任意の関数で構いませんが、 取り扱いの便宜上、 確率分布 P (x) を持つと考えます。 すなわち、

CX (x) = (P (x), C'X (x))

xX?, P (x) ∈ [ 0, 1 ]

Σ (xX?) P (x) = 1

xX?, P (x) = 0

  • [207]xX について P (x) は x が候補である可能性の高さを、 P (null) は X のどの要素も該当しない可能性の高さを表す値
  • [210] C'X (x) はその他の情報

... とします。

[129] P (null) = 1 のとき、該当する候補が存在しないことを表します。 ToYearN (n, X) では入力 n紀年法 N の年の名前ではないことを意味します。 ToNameN (y, X) では入力 y紀年法 N では表現できないことを意味します。

[130] P (x) = 1 となる xX が1つだけ存在するとき、 結果が1つに確定することを表します。 ToYearN (n, X) では入力 n紀年法 N における曖昧でない年の名前であることを意味します。 ToNameN (y, X) では入力 y紀年法 N で一意に表現できることを意味します。

[211] 簡単のため、 C'X (x) や P (x) の具体的な値に興味がない時、演算子 == により候補の値の集合として略記できることとします。 すなわち、

CX == { x | P (x) > 0 }

... のように書きます。

[213] 更に、 P (x) = 1 となる x が存在するとき、 演算子 == により x として略記できることとします。 P (x) = 1 となる x が存在するような CX決定的 (deterministic) であるといいます。

[212] 紀年法 N におけるある y が名前 "A", "B", "C", "D" について P ("B") = 0.3, P ("D") = 0.7 のとき、

ToNameN (y, X) == { "B", "D" }

... と書きます。

[214] あるいは、 P ("C") = 1 のとき、

ToNameN (y, X) == { "C" } == "C"

... と書きます。


[180] 候補関数 C1, C2 について合成 Cands (C1, C2, E) は、 条件 E に応じて C1, C2 を組合せたものとします。

[247] ここで組合せたものとは、 任意の入力 c について C1 (c) = C2 (c) = null のとき null を返し、 それ以外のとき C1 (c), C2 (c), E のみによって決まる値を返すようなものをいいます。

一貫性規則

[165] ToNameN によって得られた yの名前は、 ToYearN に与えた時、 y が候補(の1つ)として得られるべきです。 逆に ToYearN によって得られたの名前 nは、 ToNameN に与えた時、 n が候補(の1つ)として得られるべきです。 すなわち、 紀年法 N一貫性規則 (consistency rules):

yY, ∀nS, nnull, ToNameN (y, X) == S ⇒ ToYearN (n, X) == Ty

nNamesN, ∀yS, ynull, ToYearN (n, X) == S ⇒ ToNameN (y, X) == Tn

... が共にとなるべきです。

[218] もしとならないことがあるなら、そのような紀年法 Nの名前を結びつける機能を果たせていません。 この先、特に断らない限り、 紀年法一貫性規則を満たすものとします。

[166] 検討が不十分な紀年法の定義は、 一貫性規則を満たさないかもしれません。 紀年法の記述を取り扱うプログラムの実装は、 実装手法によっては、 記述された紀年法一貫性規則を満たすか否か、 検査する必要があるかもしれません。

[217] ToYearN に対する入力 n は、 断片的なの名前 (例えば虫食いのある日付らしき文字列中のと思われる部分)の範囲を表す値 (例えば十年紀の名前) などに拡張することもできるでしょうが、 ここでは考えないことにします。

紀年法の決定性

[224] 多くの紀年法の名前に固定的な関係があります。 そこで、

... とします。

[144] 紀年法決定的であるとは、 の名前が一対一対応するということです。 従って決定的紀年法 NM写像の形で記述できます。

[148] NM = (NamesNM, ToNameNM, ToYearNM) = (MapNM)

[93] MapNM = {(y1, n1), (y2, n2), (y3, n3), ...}

[133]yY, ToNameNM (y) == {n ∈ NamesNM, (y, n) ∈ MapNM のとき nそうでないとき null

[134]n ∈ NamesNM, ToYearNM (n) == {yY, (y, n) ∈ MapNM のとき yそうでないとき null

年の名前の数

[145] 多くの紀年法において 「年の名前」 は、

... のようにそれぞれある数値を表しています。

[251] そこで、 「年の名前」 から数値を取得する関数 ToNumber (n) を考えます。 ToNumber (n) は、

... という任意の関数とします。

[220] 例えば、 ToNumber ("平成20年") = 20, ToNumber ("平成元年") = 1, ToNumber ("平成末年") = NaN のような関数 ToNumber を定めることが出来ます。

整数増加型紀年法

[80] 多くの紀年法整数で識別する形をとります。 そのような紀年法の性質をみていきます。

[76] 多くの紀年法は、 の名前 n1の次のの名前が n2 であるとき、 ToNumber (n1) + 1 = ToNumber (n2) となる性質を持っています。

[252] そこで、 全順序集合たる集合 Y における整数増加型紀年法 (integer-incrementing year naming scheme) NI は次のように記述できる紀年法とします。

[149] NI = (NamesNI, ToNameNI, ToYearNI)

[239] NI名前決定的

[136]n ∈ NamesNI, ToNumberNI (n) ∈ 𝐙

[238]i ∈ 𝐙, ∃n ∈ NamesNI, ToNumberNI (n) = i

[138]yY, ∀X, ∃S, Snull, ToNameNI (y, X) == Snull

[137]ylY, ∀ymY, ∀X, ∃Sl, ∃Sm, ∀nl ∈ NamesNI, ∀nm ∈ NamesNI, ToNameNI (yl, X) == Slnl ∧ ToNameNI (ym, X) == SmnmI

[176] I: ToNumberNI (nl) + 1 = ToNumberNI (nm) ⇔ yl + 1 = ym

[240] 整数増加型紀年法 NI では y を表す年の名前が1つ以上存在しますが、 そのような年の名前 n に対する ToNumberNI (n) は y だけによって定まる整数 i となります。 y 以外ので値 i が得られることはありません。 従って yi により区別できます。 そこで便宜上そのようなyi と書くことにします。 yi + 1 = yi + 1 となります。

[241] y1NI元年 (first year) と呼ぶことにします。


[139] 整数増加型紀年法 NI に対し、 次のような紀年法 ToNumber (NI) を考えます。

[167] ToNumber (NI) = (𝐙, ToName, ToYear)

[242]i ∈ 𝐙, ∀X, ToName (yi, X) = i

[243]i ∈ 𝐙, ∀X, ToYear (i, X) = yi

[244] ToNumber (NI) とは NI の NamesNI要素を ToNumberNI を適用した結果に他なりません。 言い換えると、 整数増加型紀年法の「整数」の部分だけを取り出したものであります。

[88] 同じ集合 Y に対して定義される 2つの整数増加型紀年法 NI1, NI2比較を考えます。

[90] ToNumber (NI1) = (𝐙, ToName1, ToYear1)

[95] ToNumber (NI2) = (𝐙, ToName2, ToYear2)

[135] ToName1 (y, X) = i1

[141] ToName2 (y, X) = i2

とするとき、

[150] = ToName1 (y, X) - ToName2 (y, X) = i1 - i2

y によらず一定です。

[245] = 0 のとき、 2つの整数増加型紀年法 NI1, NI2数値的に等価 (numerically equivalent) であるということにします。

[246] {"平成元年", "平成2年", "平成3年", ...} のような紀年法と {"平成元年", "平成二年", "平成三年", ...} のような紀年法数値的に等価だ、 と記述できます。

[151] 1つ基準となる整数増加型紀年法を選ぶと、 他の整数増加型紀年法との関係性を によって記述できます。 そこで NI1 に対する NI2offset ということにします。

[153] NI1 が {"西暦2019年", "西暦2020年", "西暦2021年", ...} のような紀年法で、 NI2 が {"令和元年", "令和2年", "令和3年", ...} のような紀年法だとすると、 offset2018 になります。

[154] すべてのグレゴリオ年集合に対して定義される整数増加型紀年法は、 西暦紀年法を基準に選ぶと、 西暦紀年法に対する offset によってその整数の年数としての関係性を記述できます。

[173] 具体的には、平成紀年法offset = 1988令和紀年法offset = 2018西暦紀年法offset = 0 と記述できます。


[177] 整数減少型紀年法 (integer-decreasing year naming scheme) ND は、整数増加型紀年法の定義のうち、 I を次の D に置き換えたものとします。

[178] D: ToNumberND (nl) - 1 = ToNumberND (nm) ⇔ yl + 1 = ym

循環型紀年法

[86] の名前が c 通り (c ∈ 𝐙, c > 0) あって循環するような紀年法があります。

[248] 循環型紀年法 (circular year naming scheme) NC は、次の条件を満たす紀年法をいいます。

[94] NC = (NamesNC, ToNameNC, ToYearNC)

[140] NC年決定的

[143] C = {i | i ∈ 𝐙, 0i < c}

[142]n ∈ NamesNC, ToNumberNC (n) ∈ C

[146]yY, ∀X, ToNameNC (y, X) = ToNameNC (y + c, X)

[168]ylY, ∀ymY, ∀X, ∃Sl, ∃Sm, ∀nl ∈ NamesNC, ∀nm ∈ NamesNC, ToNameNC (yl, X) == Slnl ∧ ToNameNC (ym, X) == Smnm ∧ ToNumberNC (nl) + 1 ≡ ToNumberNC (nm) ⇔ yl + 1 ≡ ym (mod c)

紀年法の合成

[254] 元号紀年法群や、元号西暦のように、複数の紀年法が併用されることがあります。

[255] 2つの紀年法 N1, N2 の合成を表す関数 Compose を、 次のように定義します。

[256] Compose (N1, N2, E1, 2) = (NamesN1 ∪ NamesN2, Cands (ToNameN1, ToNameN2, E1, 2), Cands (ToYearN1, ToYearN2, E1, 2))

[257] ここで E1, 2 は合成方法を記述する任意の値とします。

[258] 合成して得られた紀年法一貫性規則を満たすか否か、 決定的か否か、 等は入力の紀年法 N1, N2 の性質や E1, 2 に依存します。

[259] 基本的に NamesN1 と NamesN2 に重複がなく、 E1, 2 が素直な組合せを表しているなら、 入力の紀年法の性質を出力の紀年法も保持していることが多いと考えられます。

[260] 例えば平成紀年法令和紀年法を素直に組み合わせれば、 名前決定的紀年法が得られると考えられます。

[261] ところが大同 (日本の元号) の紀年法大同 (満州国の元号) の紀年法を組合せた紀年法名前決定的にはなりません。 「大同元年」がどちらの大同を指すかの曖昧性が発生してしまい、 その解決には文脈が必要となってしまいます。

紀元型紀年法

[87] 元年の前を紀元前1年、紀元前2年と数を増やして遡っていくような紀年法がいくつかあります。

[85] 紀元型紀年法 (anno-style year naming scheme) NA は、 整数増加型紀年法 NI整数減少型紀年法 ND を組合せた次の条件を満たす紀年法をいいます。

[181] NA = Compose (NI, ND, ENA)

[253] NamesNI ∩ NamesND = ∅

[249] ToNumberND (y1) = 0

[179] ENANA によって決まる任意の値とします。

[169] 紀元型紀年法において yy1紀元後 (after epoch) のy < y1紀元前 (before epoch) のと呼ぶことにします。

[89] 紀元型紀年法は、 通常は {"紀元後1年", "紀元後2年", ...} のような整数増加型紀年法の部分と {"紀元前1年", "紀元前2年", ...} のような整数減少型紀年法の部分を組合せて、 "紀元後1年" の前が "紀元前1年" となるように ENA を決めます。

@@

[152] つまり年の名前が 「平成21年」、「平成二十一年」、「平成二一年」、「平成廿一年」 となる4種類の紀年法は、 年の名前 "21" の数値正準形の紀年法と、 4種類の書式指定規則 「平成(欧州数字)年」 「平成(漢数字)年」 「平成(漢数字位取り記数法)年」 「平成(漢数字廿)年」 に整理できます。

[147] 数値的に等価な紀年法は互いに機能的に等しいといえますが、 表記の違いを超えた違いがあるとき、 完全に交換可能ではありません。 例えば、 大正中華民国主体数値的に等価な紀年法ですが、 一般にこれらは別のものと考えられています。

[155] 紀年法には何らかの呼称が与えられてきました。 大正中華民国主体は、 数値的に等価な紀年法であっても 「大正」「中華民国」「主体」 の異なる呼称を持つ紀年法といえます。

[172] 呼称は、 「平成12年」のように年の名前に明記されているケースもあれば、 (西暦)「2021年」のように明記されていないケースもあります。 明記されていても、 「大宝2年」と「大寶2年」、 「キリスト紀元前16年」と「B.C.16」 のような表記揺れを考慮する必要があります。 そこで代表的な呼称を1つ選んで Label (N) で表すことにします。

[174] 同じ呼称の紀年法が同じ紀年法とは限りません。 例えば「貞観」と呼ばれる元号は、歴史上少なくても3種類ありました。 呼称が同じでも、年と年の名前の関係性が異なるなら、 同じ紀年法と考えることはできません。 これを踏まえて、 決定的で数値区別可能な紀年法 N1, N2同名で数値的に等価な紀年法であるとは、

[156] N1, N2数値的に等価な紀年法

[157] Label (N1) = Label (N2)

... であるものとします。

[92] Label (N) について詳しくは紀年法ラベル紀年法の同定参照。

メモ