日本の元号法制

日本の元号法制

[1] 日本の元号に関する法制度は、歴史的に様々な形態でありました。

飛鳥時代の制度

日本古代の日時

律令時代の制度

[7] 養老律令は、公文書元号を用いることを定めました。 日本古代の日時

手続きと伝達については改元手続き

江戸時代の制度

手続きと伝達については改元手続き, 改元伝達

[18] 元号を表記する漢字異体字読み方についてが出された例もありますが、 制度として整備されたものではありませんでした。 元号元号の読み方

明治の制度

幕末維新期の日時

[6] 明治改暦以後、公文書元号を用いた日付表記から干支併記が消滅しました。 日本の暦

昭和の空白期

[8] 日本国憲法下の新皇室典範元号に関する定めはなく、 登極令廃止されたため、 改元に関する法令が存在しなくなりました。

[9] 現代においてはこれを「元号の法的根拠がなくなった」ということがあるようです。 といっても元号自体の法的根拠といえるものはこの時代以前にも以後にも存在せず (当然の前提となっており)、改元の手続きを実施する法的裏付けがなくなった、 また一世一元の制が消滅した、とするのが正確と思われます。 昭和の元号危機

[21] ただし当初の政府見解は明治初年の法令に基づく一世一元が有効だとするもので、 内閣告示により改元を実施する腹積もりもあったようです。 「改元の(明文)法的根拠がない」とするのも1つの法解釈に過ぎません。

[22] ただいずれにしても元号改元の存続のための安定した法的基盤が失われた、 と昭和時代後期の人々が考えるに至ったことは、動かしようのない事実です。 たとえある法解釈により元号改元が存続するとみなせるとしても、 昭和の次の代替わりのタイミングで、 そうではない法解釈により元号制度が消失したと主張する勢力が出現し、 社会が混乱することは必至だったでしょう。 (皮肉なことに元号法制定運動によってその蓋然性は高まってしまいました。)

昭和の元号法

[2] 昭和時代後期、改元方法の概要を定める元号法が制定されました。 これが現在も存続しています。

[23] 元号法制度では、 皇位継承があるとき改元が行われます。 新元号は、内閣政令として定め、天皇がこれを公布することで、 施行されます。 元号法

[3] 元号の決定の方法と手続きの詳細は法律では定められておらず、 政府内の規定や個々の改元時の会議で都度定めているようです。 元号の選定

[14] 改元時の法令改正や事務手続き等については改元

[17] 元号法に関する事務は日本政府内閣府大臣官房総務課が所掌しています >>16


[4] 元号の利用方法、例えば元号年の表記方法などは法令で定めておらず、 従前の慣習が継続しています。 元号日本の暦

[5] 地方公共団体条例や各種組織の規則などで、 元号の利用の方法が定められている場合があります。 日本の暦

[24] 一般的に、公文書政府地方公共団体が年を表記する場合には、 元号を主に使うことが期待されています。 元号を敢えて使わないとすれば、相応の理由が求められます。 元号法

[25] また、民間人が政府地方公共団体に提出する書類などでは、 事務処理の都合上、元号を用いた統一的な表記への協力が要請されています。 しかし、元号を使う義務が課されているものではありません。 元号法

[26] これは、例えば役所に提出する書類に日本語で記述する義務がないとしても、 日本語で記述して提出することが期待されているのと同じようなものと理解されます。

[27] 民間人同士でやり取りされる文書等には、元号を用いる義務や要請などはありません。 円滑な意思疎通のため、公共性の高い分野、例えば公共料金の関係や法的な契約書類などに於いては、 国の定める紀年法である元号の利用が一般常識として好ましいと考えられるところであり、 それ以外の場面でも元号を利用することは有益と考えられます。 しかしながら、これらはあくまでマナーのレベルであって、 そうしないことによる罰則や法的不利益はありません。 現代日本の紀年法

[28] 例えば日本国籍私人 A と B 間の取引で A が独自の紀年法を用いると、 B がこれを解しなかったことで取引に支障が出る恐れがあります。 法的紛争に発展するリスクもあります。 国の定めた紀年法である元号は A と B が共通して理解することが期待されますから、 元号の利用は円滑な取引に寄与します。 とはいえあくまで A と B の意思疎通の問題ですから、 元号を使わないことに A と B が同意しているなら、 それによって法的不利益を被ることはありません。

[59] 「昭和→平成」改元の裏でどんな手続きや発言があったのか? 内閣法制局&内閣府から開示された政府資料を全公開します - スズキオンライン, https://michsuzuki.hatenablog.com/entry/2019/03/20/113127

[43] >>110 p.363

また、元号法制定にかかる国会審議で「元号法は、その使用 を国民に義務付けるものではない」との政府答弁があり、法制定後、多くの役所で国民に元号の使 用を強制しないよう注意を喚起する通達が出されている。

[44] 「多くの役所」が具体的にどこなのかは書かれていない。

関連

日本の紀年法改革

メモ

[656] 改元対応、どうしますか? | 日本一小さな仮想自治体 () http://www.v-localgov.com/2017/01/%E6%94%B9%E5%85%83%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E3%80%81%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%81%8B%EF%BC%9F/

[98] 幕末の改元詔書下書き、大阪で発見 : 地域 : 読売新聞オンライン () https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20190324-OYO1T50005/

[19] 元号と追号との関係等について : Bureau de Saitoh, Avocat (弁護士 齊藤雅俊) () http://donttreadonme.blog.jp/archives/1073399256.html

[10] 松浦晋也さんはTwitterを使っています 「元号を公文書への記載を義務付けたのは大失敗だったと思う。社会につまらん小さなイライラを確実に増やしている。伝統とかアイデンティティとかは奉って、社会の機能に関する部分からは切り離しておくべきだ。 https://t.co/suCEJWnKbi」 / Twitter (午後5:29 · 2017年11月28日 , ) https://twitter.com/ShinyaMatsuura/status/935425470203432960

[11] 大宝律令養老律令批判!?

[12] 改元をめぐる制度と歴史(短報) - digidepo_11126513_po_081105.pdf, https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11126513_po_081105.pdf?contentNo=1