[22] 時間を1次元の一方から他方へ進むものとみる時間軸やタイムラインのように呼ばれる考え方は、 物理学に限らずいろいろな応用分野、いろいろな文化で採用されています。
[23] 古典的な物理モデルや、 古今東西のいろいろな日時制度、 いろいろな応用分野では、 時間は途切れず単調に等間隔で進むことを基本的な前提としています。
[24] より複雑なモデルが必要となる応用分野もあります。
[25] 相対性理論によれば時間の進み方は一定ではありません (象徴的には双子のパラドックス)。 人間によって観測される時間も、 楽しい時間が過ぎるのははやいといわれるように、 一定ではありません。 そうした時間自体の進み方の違いを考慮しない場合であっても、 理想的に等速で進む時間と、 現実の観測機器で実現できる精度の違いから生じる見かけ上の歪みが問題となる場合があります。 閏秒のない時刻系や leap smearing のように、精密過ぎる系と実用との調整のため敢えて歪みを生じさせることもあります。
[26] 動画の時間的構造を表す媒体タイムラインや、 ゲーム内時間のように、 現実世界の時間軸と独立したタイムラインを構成し、 「再生 (play)」 によって現実世界の時間軸と適宜連結されるものもあります。 そうしたタイムラインは、 スポーツの試合のように中断と再開が起こり得ます。 動画のようにシークや逆再生、 速度変更があり得ます。
[27]
さらにフィクション作品一般に目を向けると、
時間旅行や時空操作など、多種多様な時間軸の操作が考案されています。
[28] 多くのタイムラインモデルは、 タイムライン上の位置として、 点に当たるものと範囲に当たるものとの 2つの概念を定義しています。
[29] 両者は、数直線上の点と範囲 (区間)、 空間上の点と線分に相当するものです。 点はタイムライン上のある特定の位置をピンポイントで表し、 範囲は点から点までを表します。
[30] 概念上点と範囲の違いは明確ですが、 現実的な取り扱いは難しさがあります。 数学的に大きさのない点や幅のない直線が現実の空間には存在し得ないのと同様、 時間軸上の長さが存在しない点も存在し得ないためです。
[31] 例えば
TM_Instant
は点の定義の一例ですが、
範囲の長さが分解能より短いものという見方をしています。
[32] この考え方はある意味賢いといえます。 現実の応用はタイムライン上の位置を高精度に厳密に記述できればよいというものではなく、 場面ごとに適当な精度があるべきなのです。 例えば1年間の出来事をまとめるなら、 各事件の日時が厳密に記述されるより、 日単位で記述したほうが便利なことが多いでしょう。 日という点の大きさより小さな範囲は、 すべて同じ点だといえるのです。 量子化された離散的な時間軸上の定義としてとても合理的です。
[33] 日本語にも時刻と時間があり、 厳密には時刻が点を、 時間が範囲を表すとみなされています。 しかし実際的にはどちらも時間といわれることが多いです。 どちらか厳密に決定するよう求められると、 戸惑う場面も少なくありません。
[48] 範囲が2つの点によって構成されるので、 2つの点の距離を定められるなら、 それが範囲の長さというべきものになります。
[49] すると範囲は2つの点で定めるほかに、 1つの点と長さで定めることもできます。
[50] 更に進めて、時間軸上の特定の位置に紐付かない長さを考えることもできます。
[51] 長さによって複数の異なる範囲がどれだけ続いたかを比較できます。 あるいは範囲の決定を必要となるまで遅延できます。
[52] 例えば図書館の貸出期間を1週間という長さに予め決めておきます。 本を借りた時点で、 その本を借りることができる範囲は、 その日から1週間の長さに確定します。 このように予め特定の点に束縛しない長さは、 契約の一般化という社会生活の基本を支えています。
[53] 範囲が点と長さで表すことができ、 長さはそれ自体で有用なので、 時間軸上の位置の表現を点と範囲、補助的に長さとするモデルより、 点と長さの2つの概念に簡単化したモデルを採用することも多いです。
[37] 点を表す語の例: 瞬間、 時刻、 時間位置、 時点、 時間、 日付、 日時、 時、 絶対時刻
[34]
1次元であるタイムラインに位置を表す点や範囲が複数存在するなら、
その順序関係を定義できることになります。
[35] 複雑な時間軸モデルを採用すると、順序を一意に定められないかもしれません。
[36] ループものの作品世界内の出来事の順序の決定は困難です。
[39] タイムライン上の位置を特定するための番地付け方法が、 暦法や時法と呼ばれるものにほかなりません。 より広く捉えれば、いろいろな手法があります。
[40] もっともわかりやすいものが、 タイムライン上の位置を区切って名前をつけた絶対時刻を使う方法です。 日常的に用いる暦の日付や時計の時刻はすべてこれに当たります。
[41] 基準点は文脈によって都合の良いものに取ることができ、 これを特に相対時刻ということがあります。 日常的に使う昨日、今日、何日前という言葉はこれに当たります。 他にもスポーツの試合の時間、 MET、 カウントダウンなどいろいろ使われています。
[43] より曖昧、大まかに時刻の範囲を指し示すのが、 時代と呼ばれるものです。 平安時代、江戸時代のような歴史時代の区分、 中生代、ジュラ紀のような地質時代の区分など、 これもいろいろな種類があります。
[44] 時代区分は、 相互の時間的順序関係は明確であっても、 時間軸上の位置が明確に定められないことがあります。
[46] 遺跡からの出土品により推定される編年は、 出土位置などから決定できる時代的順序関係を示すもので、 それぞれの実年代が明確に定まるとは限りません。 (究極的な目標は実年代の決定かもしれませんが。)
[47] 時代区分は多種多様で一般化するのが難しく、 日時モデルと統合的に扱われることはあまりありません。 が、 日時知識の統合的な情報処理に必要な場面もありますし、 絶対時刻としての元号が歴史時代区分に使われるようにまったく別個のものでもありません。 モデル化例として ISO 19108 の時間位相があります。
[59] 絶対時刻と相対時刻に本質的な違いはありません。 絶対時刻といえる時刻系、 暦法、 紀年法なども、結局どこかに定めた元期からの相対時刻にほかなりません。 この意味で絶対時刻は相対時刻のサブクラスです。 絶対時刻と相対時刻を分けるのは、 元期が固定され広く共有されているか、 一時的に文脈から決定されるかであり、 その境界は主観的です。
[57] 相対時刻は、 基準点と表したい時刻の2つの時刻の時間長によって記述される時間間隔ともいえます。 従って相対時刻は時間長のサブクラスとみなしたり、 相対時刻と時間長は同じものと考えたりするモデルがあり得ます。
[60] 本質的な同一性がわかりやすいのが単一数値時刻系です。 例えば Unix time は元期たる1970年との時刻の差として時刻を記述するものです。 これは絶対的に時刻を特定する絶対時刻とみることもできますし、 基準点からの相対時刻とみることもできます。 いずれにしても外見上は単なる時間長と区別がつきません。
[64] 媒体タイムラインのような timed media の時間軸と現実世界の時間軸の対応関係を考える時、 媒体タイムラインの時刻は時間長や相対時刻のようなものと理解できます。 一方で媒体タイムライン内部のみを考えれば絶対時刻ともいえます。
[65] 時刻 t1 に動画の位置 u を再生すると、 その再生した時刻は t1 + u です。 別の時刻 t2 に同じ位置を再生すると、 その再生した時刻は t2 + u です。 再生という行為によって絶対時刻が決定する u は時間長の性質を持っているといえます。
[67] ゲーム内では独自の時刻が設定されているかもしれません。ゲーム内世界では絶対時刻ですが、 現実世界の絶対時刻とはリンクしておらず、動画再生時間と同じように基準点を移動したり、 中断したりできるかもしれません。
[68] 生放送の動画のタイムシフト再生では、 時刻は撮影当時の現実世界の絶対時刻により表現されていることがあります。
[42] 外見上絶対時刻表示でも、 相対時刻として機能していると理解することもできます。
[58] はたまた、 (物理学的には正しい理解とはいえないでしょうが、) タイムラインの一部分を切り取って別のタイムライン上の位置に移植したため時空が歪んでいるのであって、 やはり正しい絶対時刻であると捉えることも一応可能です。
[69] 結局これらよく似ていてちょっとずつ意味論的に違う概念を明確で普遍的に合意可能な形で区別するのは無理そうです。 いろいろな理解の方法があって、いろいろなモデルが現に存在しています。
[4] ISO 19108 では、 時間は空間次元と似た1つの次元です。 次のような性質を持ちます。 JIS X 7108:2004 5.2.1
[16] ISO 19111 では空間の座標系と組み合わせる時間の座標系を扱っています。 次の各項を参照。
[20] 一般的に時間は1次元の座標で扱われます。しかし、 異なる独立した量を扱うなら、 2つの時間座標を使うことができます >>21。 例えば地震などで地表下の点の時間位置・空間位置の垂直座標は、 ミリ秒単位の音波伝播時間で表し、 それとは別に年単位の観測時刻を表します >>21。
[19] OWL-Time は time-line という語を使っています >>18 が、
定義していません。 :TemporalPosition
[70] 時間GISにおける時間概念の整理, https://www.slideshare.net/yufujimoto/gis-16769564
[72] time | Dataset Publishing Language | Google for Developers, , https://developers.google.com/public-data/docs/canonical/time