[21] 非公式な仕様書の翻訳を参考にすることは、おすすめできません。 面倒でも原文を読みましょう。
[2] インターネットや Web の技術は日進月歩です。残念ながら、 日本語で得られる正しい情報はそれほど多くありません。 たまに仕様書を日本語に翻訳したものが公開されていることがありますが、 翻訳が正しいかどうかはっきりしないものばかりですし、 原文の更新に追従できていないものが多いです。
[6] 日本語で読みたいなら、仕様書ではなく開発者向けドキュメントを読みましょう。 最新の生の情報が知りたいなら、がんばって英文を読んでください。 日本語訳された仕様書は、どちらの役にも立ちません (むしろ有害です)。
[3] 00年代後半頃から、 Web 技術の仕様書は日に数回の頻度で更新されるのも珍しくなくなりました。
[4] 2010年頃には原文の更新に自動的に追随して翻訳済み部分だけ翻訳版に差し替えるような仕組みが用いられる例も現れました。 しかし、残念ながらその方式が一般的になってはいません。
[5] 従って、仕様書の翻訳版は、基本的に古いものだと了解しておく必要があります。 (が、多くの翻訳版は、そのことを読者に十分に警告していません。)
[7] 中には、元の仕様書が廃止されているのに、何の注記もなく元の翻訳のまま公開され続けていることすらあります (むしろ翻訳が終わったら放置される方が多い気もします)。 原文仕様書についても誤って古い版を参照する人が後を絶たず問題となっています。 翻訳を公開し、放置するのはその問題に加担しています。
[13] 日本の公的な組織が関係する世界組織の文書を翻訳したものでも、 翻訳のレベルが低くて意味がわからないものがあったりします。 公的組織であっても十分な予算と体制を構築せずに機械翻訳より良いといえるかどうか判断がつかないレベルのものを垂れ流している現状はどうしたものでしょうか。
[17] IETF や W3C の仕様書を JIS や JIS TR として日本の工業標準にする制度は、 特にひどい。国の機関が承認した文書という箔付けがある分、たちが悪いです。 翻訳JIS, JIS TR 参照。
[11] 原文の仕様書が緩いライセンスになっていても、 翻訳文がより厳しいライセンスになっていたり、ライセンス不詳だったりすることがよくあります。
[12] ソースコードにコメントとして含めたり、 プログラムの動作仕様の関連文献として配布物に含めたりと、 仕様書の一部または全部を複製して配布することは、業界では珍しくありません。 原文がそのような利用を認めているとしても、翻訳文もまた認めているとは限らないので、 慎重な検討がひ必要です。
[10] 仕様書の翻訳も、ただのドキュメント (やドキュメントの翻訳) も、 どちらも間違いが混入する可能性はあります。しかし、 仕様書はいかにも正しいものであるかのような印象を読者に与えてしまいます。 翻訳の誤りという可能性を忘れて仕様書に書いてあるのだから正しいという前提で誤った議論を進めてしまう危険性があります。
[14] 英語が読める人なら、違和感があったら原文を読んで確かめれば良いですが、 英語が読めない人は翻訳文にちょっと違和感があっても、それを信じるしかないわけで・・・。
[18] Google検索で原文よりも質の低い翻訳が上位に出てきてうざったい。 (見ている人の言語と違う言語の公式サイトが下位に来てしまうのはGoogle検索の問題でもあるけど...)
[19] Discontinuation of Database of W3C Volunteer Translations in 2017 (Coralie Mercier著, ) https://lists.w3.org/Archives/Public/w3c-translators/2017JanMar/0000.html
[22] 標準化団体側も翻訳してもらったよわーいって紹介してたり、あろうことか仕様書本文から誘導してたりすることもあるんですよね。 でもその中の人達は翻訳を必要としてないんで、翻訳文が低品質だったり、本家への追随を怠ってたりする実情を把握してないんです。 困ったものです。
[23] 翻訳してる人も紹介してる人もみんな善意でやってるから、あまり悪くは言いたくないけど、 でも実際のアウトプットが悪いってのはちゃんと言ってかないといけない。 ぜんぶ善意でやってても、世の中をよくするためになってないんです。
[24] そして翻訳を高品質に出来る人は翻訳を必要としていない、 翻訳を高品質にする前に原文が変わってしまう、 っていうのは構造的な問題で、どうしようもない。 何年たっても改善の兆しもないし妙案を出す人も出てこない。だから諦めるしかないのです。