[13] 文書の表示方法 (装飾) に関する直接的な記述を避け、 文書の構造のみを記述し、表示方法はその構造の表示規則として間接的に記述した方が可搬性が高く利用しやすい、 というのが GML 以来数十年にわたりマーク付け言語の設計者達が信じてきた基本原理です。
[14] 例えば、雑誌原稿を後から単行本化することを考えると、 見出し部分に「フォントサイズ ○ポイント、書体 ○○」のような記述を書き込むより、 ここは「見出し」であるとだけ書いておき、 他に「見出しはフォントサイズ ○ポイント、書体 ○○」 という設定を用意する方が手間が省けます。
[15] また、Webサイトをデスクトップブラウザーの利用者にもモバイルブラウザーの利用者にも等しく見やすく表示するため、 本文と関連情報を左右に並べて表示する方式と、 本文の下に関連情報を続けて表示する方式を用意し、 画面の幅によって切り替えたいことがあります (レスポンシブデザイン)。 そのためには文書自体に表示位置を書き込むのではなく、 「文書のこの部分をここに表示する」との指定を選択的に適用できる仕組みが必要です。
[16] マーク付け言語を含む文書記述システムの歴史は、 そうした間接的な記述と、直接的な記述との綱引きの歴史でもあります。 平均的知識レベルのワープロの利用者が「太字」や「フォントサイズ大」 のような直接的な記述から間接的な記述へと移行するためには、 大きな学習コストが必要です。しかも、一度制作完了したら他の目的に再利用しないような多くの文書にとっては、 無駄なコストともいえます。間接的な記述にした方が同じ組織内の文書の体裁を整えるのが容易、 といったようなメリットもあるにはありますが、その程度であれば WYSIWYG なワープロソフトウェアで人の目で調整しながら編集するので十分ともいえます。 ですから、どちらの方式を採用するべきなのかは、文書の用途やどんな人が利用するかによっても変わるのでしょう。
[17] HTML はもともと SGML の流れから間接的な記述を志向していました。
これは色々な機種・OS で動作する GUI や CUI のブラウザーが混在していた
1990年代前半の計算機環境に非常にマッチしていました。
しかしその後の WWW の爆発的な普及により、
非専門家を中心とする幅広い著者層がデスクトップブラウザーを中心とした利用者に文書を提供するようになった
1990年代後半には、ワープロや WYSIWYG システムの影響を強く受け、
font
やテーブルレイアウトなどの直接的な記述に大きく偏るようになりました。
その弊害に気づいた人達は、装置独立性や表現と構造の分離のような原理を掲げて
「正しい HTML」の復権を求めました。
[8] ( 版) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsik/18/4/18_4/_pdf
[31] W3C Journal, , https://web.archive.org/web/19990501192705/http://w3journal.com/5/s3.walsh.html
[9] yohei-y:weblog: Javascript+HTML のデザインパターン http://yohei-y.blogspot.com/2005/09/javascripthtml.html (名無しさん [sage] 2005-09-19 02:33:43 +00:00)
[10] Standards for Life: Standards in a Nutshell II http://www.standardsforlife.com/standards-in-a-nutshell-ii (名無しさん 2006-11-16 00:02:08 +00:00)
[11] 楽天の店舗の中の人へ楽天Webサービス利用者から愛をこめて ( 版) http://neta.ywcafe.net/000718.html (名無しさん 2007-02-11 00:51:47 +00:00)
[12] Separation of semantic and presentational markup, to the extent possible, is architecturally sound ( ( 版)) http://www.w3.org/2001/tag/doc/contentPresentation-26.html
[32] Multi-purpose publishing using HTML, XML, and CSS, , https://www.w3.org/People/Janne/porject/paper.html
[18] HTMLページの構造の階梯(かいてい), http://deztec.jp/x/10/faireal/d10911.xml
[19] naoさんはTwitterを使っています: 「こんなCSS書くような奴、ロクなもんじゃねえ。 信じられるか?これHTMLに書いてあるんだぜ・・・。 https://t.co/ebh4fouJH2」 / X, , https://twitter.com/nao_web_/status/1687042478615261184
普通の感性
一応態度は一貫している
いやいや...
[24] 昔はよく見たという反応が多数あるのも興味深い。 昔よりこういうのが減ってる実感はあまりないし、 Tailwind のせいで増えてる印象もあるけど、逆に思ってる人もいるのか。 統計データがないと全体的な動向はわからないなあ。
[25]
table layout 時代によく見たという証言はさすがに記憶の劣化、混濁ではないかなあ。
table layout 時代なら font
使っていた、 style=""
使っていたという方がしっくりくる。
そうでなければ局所的な現象かなあ。
table layout の方が書きやすいという謎感性と
CSS に分離するべきという時代の流れの強制力が同時に働いた時期もまあなくはないのかもしれないが...
[26] 元々 SGML は雑誌連載を単行本化するような原稿流用を楽にしたいとか、 新書を今度は文庫本で出したいというときに便利ですよという感じのを売りにやってたんですよね。 それが HTML で見ている人の環境が違ってもそれぞれにいい感じに表示させられて便利じゃんと実証されたもんだから、 HTML4 が思い切り風呂敷を広げちゃった。どんな環境にも適応できる。何なら画面表示だけじゃない。音声読み上げだってできる。 将来登場する未知のデバイスにも対応できる。ってね。
[27] それで HTML は特定の環境での見た目を前提に書くべきではないとか、 表現方法は HTML には一切書いてはいけないとか、 どのブラウザーでどう見えるかを気にしてはいけないとか、 わけのわからないことを言い出す原理主義が台頭してきてしまったのです。 まあそれはどのブラウザーでもピクセル単位で表示を制御したいとか、 自分達が見た目を確認したブラウザー以外は締め出したいとかいう別方向のカルト思想への対抗で出てきたという側面もあるのですけど。
[28]
実際には HTML4 の目論見はほとんど完全な失敗で、ぎりぎり print
が今でも使われているくらい。
handheld
が紆余曲折を経て viewport
という新たなおまじないを生み出してしまったのはまだマシな方で、
音声読み上げ方面に至っては CSS を使わない ARIA という魔物を生み出してしまって、
技術的にはまったく真逆の方向に進化してしまいました。
表現と構造の分離、 HTML から CSS への表現構造の追い出しの大きな夢は、
font
と frame
と table layout を消し去ったくらいのところで潰えてしまいました。
font
はなくなっても style=""
があるので大差はなく。
table layout も div厨に変わっただけですけど、
table layout の無駄な構造と独特のレイアウトモデルが CSS の箱モデルに置き換えられたのは大きな進歩です。