上高地の衛兵こと、釜トンネル。
国道158号に面する中ノ湯側坑口には、新旧の坑口が仲良く並んでいた。
当然我々のターゲットは“釜トン”こと旧隧道だったが、人の目もあり進入は不可能だ。
そこで我々は計画を変更して、上高地側坑口へと向かうことにしたのである。
平成17年に開通したばかりの(新)釜トンネルは全長1310mもあり、完全2車線で防災設備も完備した近代的トンネルである。
だが、この立派なトンネルを通ることが出来るのは、特別な許可を与えられた車…主にバスやタクシーのみである。
それでも、年間200万人を超す上高地の観光客がこぞって通行しているのだから、過剰な設備投資と安易に言えるものではない気がする。
自動車にとってはただの通過地点に変わってしまった“釜トン”だが、一方で今も自由に通行できるチャリにとって、たった一本で145mもの高低差を稼ぎ出すトンネルが印象に残らないはずがない。
「二度はない。」 そう思うほどのほどに苦しい道であった。
その通過にたっぷり20分近くも要していることからも、分かって貰えよう。
2008/7/2 17:21
連続11%の急勾配に耐え抜き、脱出した先は、産屋(うぶや)沢という。
トンネルから続く坂を登りきったところで突如平坦になって短い橋を渡るが、この下の小さな沢が産屋沢である。
釜トンの入口が中ノ湯なら、出口は産屋沢と、昔から知られた名前だという。
釜トン自体のカリスマは失われてしまったとはいえ、梓川の車窓の大なる変貌は、依然として釜トンの存在感を確認させてくれるものだ。
中ノ湯までの車窓はずっと急峻なV字谷の底にあったが、この産屋沢まで来ると、上高地を象徴するあの風景…大正池…を彷彿とさせる、壮大な山間の堆積平野に変わっている。
実際、ここから大正池まではもう2kmほどだ。
川べりを行くこの県道「上高地公園線」も、トンネルであんなに登らされたのがまるで嘘のように、あとは終点上高地までほぼ平坦である。
え? 上高地?
なにそれ? 美味しいの?
…というわけで、 Uターン!
つうか、 Ob ( オブ ) ターン??
nagajisさんとも笑ったんだが、ここまで登ってきて上高地へは行かないとか、どんだけマゾだって話だよ(笑)。
17:22
新トンネル上高地側坑口の目の前で分かれ、梓川河原の方へ急激に下っていく道