釜(かま)トンネルは、日本で最も良く知られたトンネルのひとつではないだろうか。
一度でも体験すると忘れがたいその姿から、 “釜トン” の愛称で親しまれてきた。
釜トンは、長野県道24号上高地公園線上にあり、その起点である国道158号との中ノ湯交差点に面している。
この県道は、世界的山岳観光地である上高地へと至る唯一の自動車道であり、釜トンは開通以来、上高地への「門」として存在し続けてきた。
しかも、その門は大変に狭く、そして急勾配であり… 単純な門と言うより、上高地への進入を物理的に選別する「衛兵」といっても良いかも知れない…。それが、釜トンネルであった。
釜トンならではの狭隘と急勾配のために紡がれた逸話は、枚挙に暇がない。
それを語り始めれば、あっという間にスクロールバーが目一杯まで小さくなってしまうだろうが、敢えて皆様には多くの予備知識のない状態で、この釜トンネルを体験して貰いたいと思う。
私と、nagajis氏が、この日そうであったようにだ。
そこには、トンネル(隧道)の常識を覆すような光景が、一つならず待ち受けていた。
しかも、それが廃隧道になっていたのだから、もう タ マ ラ ナ イ。
2008/7/2 17:00 【 周辺地図(別ウィンドウ) 】
国道158号を松本から高山方向へ向かって進むと、幾つものトンネルの果て、中ノ湯洞門という古びた洞門を抜けた先で、この青看が現れる。
ここは古くから中ノ湯といい、以前はその名の通りの温泉場だった。
そして、釜トン開通以来、ずっと上高地の玄関口を務めてきた場所だ。
青看には、はっきりと「直進」「県道24号」「上高地」と記されており、このまま上高地へも進んでいけそうだが、実際それは出来ない。
それが許されるのは、限られた一部のドライバーだけなのである。
そして、青看は現れても肝心の交差点は見えもしない。
交差点は、青看から300m近くも先にあるのだ。
だが、早くも右折と直進のレーンが別れる。
この設計は言うまでもなく、交差点の渋滞対策である。
そして、通行レーンが分岐する直前の場所に、草むらに埋もれそうな1枚の看板がある。
「県道上高地公園線 待機路線終り これより駐車・停車禁止」 と書かれている。
つまり、上高地へ向かおうとする車がいくら渋滞の列を作っていても、これ以上手前で待ってはいけな