2018/4/27 17:24 《現在地》
異形に満ちた閉塞地点から、逃げるように撤収したのは7分前のこと。
今はもうトンネルからも脱出し、その足で特徴的なラッパ型坑門まで上ってきた。そして、おそらくもう二度とここから眺めることはないだろう夕日を眺めていた。
しかし残念ながら、この美しい今日の終わり際をじっくり堪能している暇はない。日が水平線に落ちきる前に、いくつかの難所を持つ海岸線を戻らなければならない。
復路、開始!
17:38
さっそくだが、ここまで来れば一安心だ。
いまは最大の高巻き(難場�D)を攻略し終えたところだ。
距離のうえではまだ4分の1も戻れていないが、往路で一番「危ない!」と思った難所がここだった。
先を知っている帰路だからこそ、許される時間になっている。
往路と同じ海岸だが、北海道の西の端から見送る北海道最後の夕日は、とても新鮮だった。
探索での大きな成果を抱えて帰る夕焼けの道は、何もかもが誇らしく、輝かしく見えた。
今回の北海道探索全体を通じて、今が幸せの絶頂だ。
“山行が”には勿体ないくらいフォトジェニックな景色に包まれながら、黙々と歩くことしばし、別れた時とは全く違う色を纏う、見覚えのある道が見えてきた。
「無事に戻ってきたぞ! 歓迎してくれるか、道よ!
いまの私は、知っているぞ。
お前の生き別れた片割れが、どうなったか。その現況を。
そして、“天狗トンネル”という、お前の生来の名も。
全てを知って、帰ってきたぞ!」
18:11 《現在地》
天狗覆道坑口前の閉鎖ゲート、自転車の在処へと戻ってきた。
ここから天狗トンネル北口までの海岸迂回の行程は、往路で約55分を要したが、復路は30分足らずで終わった。
通れる場所が予め分かっている状況だと、道なき道でもこのくらい素早く行き来できるということだ。
話の流れとしては、これにて大団円というのが最もすっきりしそうだが、忘れてはいない、ひとつだけやり残しがあったことを。
ここから始まる天狗覆道と、その奥に続く天狗トンネルの大成側部分を、まだ探索していない。
これらは、時間切れになることを心配して往路で先送りしていた部分だ。
最後にこれをやっつけよう。
まずはフェンスを越えて、その向こう側の水面へ飛び降りる。 バッシャン!
未成ゆえに一度も灯されることのなかったナトリ