1. 緑の火山島
屋久島の12km西の沖に周囲50kmほどのひょうたん型の小さな島が浮かんでいる。
十島航路や奄美・沖縄航路のフェリーに乗ると、
屋久島のちょうど反対側に間近に迫ってくるのが口永良部島だ。
しかしこの島に上陸するとなると、屋久島を経由しなければならない。
行政区域は屋久島町に属していて、まるで屋久島の付属品のような島だ。
屋久島は世界遺産になって知名度が上がり、観光客も増える一方だが、
口永良部島は相変わらず、人知れずひっそり屋久島の横に佇んでいる。
口永良部島へは屋久島の宮之浦港から屋久島町営「フェリー太陽」で向かう。
フェリー太陽は口永良部島へ1日1往復運行されていて、
偶数日は朝、奇数日は昼に宮之浦港を出航する。
偶数日は昼、奇数日は朝に種子島へ1往復していて、
種子島、屋久島、口永良部島を相互に結ぶ役割を果たしている。
宮之浦港を出航すると、フェリー太陽は口永良部海峡に向かう。
出港してしばらくすると矢筈岬の一湊灯台が見えてくる。
正面には口永良部島が見え、その先端にメガ崎灯台が見える。
口永良部島の海岸には断崖が迫り、荒々しさを感じさせる。
フェリー太陽は口永良部海峡を渡ると、口永良部島の南岸に沿って走り、
島の最高峰である標高650mの古岳を正面に見据える。
口永良部島は火山島で、新岳と古岳の二つの火口がある。
江戸時代に大爆発を起こし多数の死者が出たとの記録があり、
その後も度々、噴火を起こしている。
霧島~桜島~鬼界カルデラを結んだ直線の延長上にあり、霧島火山帯に属している。
霧島火山帯は日本で最も活動が盛んな火山帯で、絶えず噴煙を上げる桜島はその代表格。
三島に属する薩摩硫黄島も霧島火山帯に属する火山島であり、
鬼界カルデラのすぐ南に位置する口永良部島もまた、同じ霧島火山帯にある。
火山島でありながら、緑に覆われて火山に見えない島の様相から「緑の火山島」と呼ばれる。
仰々しい古岳を回りこむと、隠されたように湾があり、本村(ほんむら)港が見えてきた。
本村の町は古岳の奥まった入江にある。
ひょうたんの形をした島のちょうど窪みのところにあたる。
口永良部島の人口はおよそ150人で、その大半がこの本村に住むが、
町というには余りにも頼りない、集落という程度の小さな港町だ。