[1] 
普通、[[漢字]]の[[異体字]]関係について言う[DFN[通用]]とは、交換可能性が限定的であるものの、
他の[[文字]]で置き換えて表現され得ることをいいます。

[2] 
具体的にどのようなものを[[通用]]と呼ぶかには、ときと場合によって様々あるようです。

* 音仮借と行仮借

[5] 
[[音仮借]]と[[行仮借]]という分類があります。[[仏徒]]特有の書き方とされます。
[SRC[>>4]]

[6] 
[DFN[[RUBY[音][お]][RUBY[仮][が]][RUBY[借][しゃ]]]]は、[[音通]]による代用を指しています。
[SRC[>>4 /222]]

[EG[
[7] [CH[新]] ← [CH[親]]、
[CH[國]] ← [CH[獄]]、
[CH[心]] ← [CH[信]]、
「偵岳」 ← 「定額」など [SRC[>>4]]

]EG]

[8] 
[DFN[[RUBY[行][ぎょう]][RUBY[仮][が]][RUBY[借][しゃ]]]] [SRC[>>4]]
は、[[字形]]の類似による代用を指すのではないかと思われます。

[EG[
[9] 
[CH[明]] ← [CH[朝]]など [SRC[>>4]]
]EG]

[13] [[音仮借]]かつ[[行仮借]]も有り得ます。 [SRC[>>12]]

[10] 
現在のところ知られる「行仮借」の用例は、すべて[[司東真雄]]の書籍です。
「音仮借」はそれ以外でも使われているものの、さほど多くはありません。
[SRC[>>4, >>11, >>12, >>14, >>15, >>70]]
[[司東真雄]]の造語なのでしょうか。
それとも[[司東真雄]]が属するコミュニティーで以前から使われていたものなのでしょうか。

[16] 
この語を使った[[異年号]]の分類に、
[[音仮借年号]]と[[行仮借年号]]があります。


[REFS[

- [12] 
[CITE@ja-JP[猿ケ石叢書 第23輯]], [[土沢郷土研究会]], [TIME[1958]], [TIME[2026-04-28T01:12:07.000Z]], [TIME[2026-05-10T14:09:33.534Z]] <https://dl.ndl.go.jp/pid/3041891/1/22?keyword=%E4%BB%AE%E5%80%9F> (要登録)
- [14] 
[CITE@ja-JP[郷土史調査必携]], [[北上史談会]], [TIME[1964]], [TIME[2026-04-28T01:12:07.000Z]], [TIME[2026-05-10T14:11:00.042Z]] <https://dl.ndl.go.jp/pid/2968848/1/26?page=left&keyword=%E4%BB%AE%E5%80%9F> (要登録)
-
[70] 
[CITE@ja-JP[岩手の歴史論集 1 (古代文化)]], [[司東真雄]], [TIME[1978.10][1978]], [TIME[2026-04-28T01:12:07.000Z]], [TIME[2026-05-14T14:35:23.356Z]] <https://dl.ndl.go.jp/pid/9537785/1/144?keyword=%E9%9F%B3%E4%BB%AE%E5%80%9F> (要登録)
- [4] 
[CITE@ja-JP[岩手の歴史論集 2 (中世文化)]], [[司東真雄]], [TIME[1979.11][1979]], [TIME[2026-04-28T01:12:07.000Z]], [TIME[2026-05-10T13:47:43.665Z]] <https://dl.ndl.go.jp/pid/9538754/1/196?keyword=%E4%BB%AE%E5%80%9F> (要登録)
- [15] 
[CITE@ja-JP[岩手の石塔婆 : 東北型の板碑文化]], [[司東真雄]], [TIME[1985.10][1985]], [TIME[2026-04-28T01:12:07.000Z]], [TIME[2026-05-10T15:03:21.294Z]] <https://dl.ndl.go.jp/pid/12261033/1/43?keyword=%E4%BB%AE%E5%80%9F> (要登録)
- [11] 
[CITE@ja[khirin | 阿弥陀如来立像]], [TIME[2026-05-01T12:59:04.000Z]], [TIME[2026-05-10T14:08:02.468Z]] <https://khirin.rekihaku.ac.jp/pid/nmjh_rekimin_h/10348052.html>


]REFS]

* データベース

[SEE[ [[異体字]] ]]

* 関連

[SEE[ [[仮借]] ]]

[3] 
よく似た語ですが、[[通用字体]]は全く違う意味 (一般に通行する[[字体]])
で使われるので、注意が必要です。

-*-*-

[17] どのような意味で使われているか、 [[GPT]] に実例を探してもらいました。
[TIME[2026-05-10T15:55:47.500Z]]

- [18] 共同使用・有効の意
-- [19] 一般語としては、[CITE[教育部辞典]]が 
「沒有時、地、人的限制,可以共同使用」
と説明しています。日本語の辞書でも、[CITE[コトバンク]]は
「ある期間・範囲内で、自由に使えること」とします。券・貨幣・言語・規則などに広く使う語義です。 
-- [20] <https://dict.revised.moe.edu.tw/dictView.jsp?ID=55534&la=0&powerMode=0>
-- [21] <https://kotobank.jp/word/通用-570668>
- [22] 世間で通じる・認められるの意
-- [23] [CITE[漢字ペディア]]の「一般に認められていること」、
[CITE[コトバンク]]の
「広く世間に認められていること」
がこの語義です。「一般語の通用」「社会で通用する」は、まずここです。
-- [24] <https://www.kanjipedia.jp/kotoba/0004892600>
-- [25] <https://kotobank.jp/word/通用-570668>
- [26] ふだんの出入りに使うの意
-- [27] これは今ではやや限定的ですが、「通用口」・「通用門」
に残っています。[CITE[goo辞書]]は通用門を
「正門とは別に、ふだんの出入りに使う門」、通用口を
「玄関とは別に、ふだんの出入りに使う戸口」
-- [28] <https://dictionary.goo.ne.jp/word/通用門/>
-- [29] <https://dictionary.goo.ne.jp/word/通用口/>
- [30] 心を通わせるの意
-- [31] これは古い語義ですが、[CITE[コトバンク]]の精選版に
「心をかよわすこと」と出ます。現代の会話でこの意味に取ることは少ないですが、
辞書上は残っています。
-- [32] <https://kotobank.jp/word/通用-570668>
- [33] 別字どうしが置換的に用いられる意
-- [34] 文字学の文脈では、「通用」は単なる「使える」ではなく、
別字が互いに代用される意味で使われます。
[CITE[CiNii]] の論文要旨では、「互換して用いられる現象」とされ、さらに
「漢字音が同一ないし近似しているため」
と条件づけています。これは、
-- [35] <https://cir.nii.ac.jp/crid/1390572174861568768>
- [36] 個別字の字義欄でいう「AはBと通用」
-- [37] 漢和辞典では、個々の字の説明で 「克と通用」、
「刻と通用」、
「箇と通用」、
「比と通用」
のように出ます。ここでの「通用」は、字形・字源が同一という意味ではなく、
その字が別字の代わりに用いられるという辞書的ラベルです。
-- [38] <https://dictionary.goo.ne.jp/word/kanji/剋/>
-- [39] <https://dictionary.goo.ne.jp/word/kanji/個/>
-- [40] <https://dictionary.goo.ne.jp/word/kanji/譬/>
-- [41] <https://dictionary.goo.ne.jp/word/kanji/頒/>
- [42] 「通仮」はその中でも音によるもの
-- [43] [CITE[コトバンク]]の[CITE[字通]]は「通仮」を
「音で通用する」
ときわめて端的に定義しています。なので、少なくとも[CITE[字通]]系では、
「通用」が上位・一般、「通仮」がそのうち音による通用を切り出した語、と読むのが自然です。 
-- [44] <https://kotobank.jp/word/通仮-2848960>
- [45] 中国語側の「通用字」は「換用できる字」
-- [46] 中国語圏の辞書サイトでは、「通用字」を 
「可以互相換用的漢字」
と説明しています。少なくとも現代中国語側では、
「通用」は「一般に流通する」の意味だけでなく、
互いに換用できる字という文字学的意味でも立っています。 
-- [47] <https://www.chinesewords.org/dict/302510-238.html>
- [56] 異体字との違い
-- [57] [CITE[コトバンク]]は「異体字」を
「標準の字体とは異なるが、意味・発音が同じで、通用する漢字」と説明しています。
つまり異体字は、同じ字の別字体という強い同一性が前提です。これに対して辞書の
「AはBと通用」は、そこまで強い「同字性」は要求せず、運用上の代用関係まで拾えるぶん、
少し緩いです。
-- [58] <https://kotobank.jp/word/%E7%95%B0%E4%BD%93%E5%AD%97-716>
- [59] 「音通」は[CITE[コトバンク]]の[CITE[デジタル大辞泉]]では、  
-- [60] 「五十音図の同行または同段の音と音が転換する現象」、  
-- [61] 「漢字で、同一字音を通用すること」、  
-- [62] 「俳句で、句の切れ目に同行・同段の音が重なること」  
-- [63] ... の三義が立っています。つまり「音通」は、国語学・文字学・俳諧用語の三方面にまたがる、
多義的な語です。
-- [66] ここでは「通用」が、単なる一般語ではなく、
字音が同じだから字を代用できるという文字学寄りの意味で使われています。
だから「通仮」や「仮借」に近い空気を持つわけです。
-- [64] <https://kotobank.jp/word/%E9%9F%B3%E9%80%9A-455946>
- [65] 「音仮借」は検索では確かに出るが、「仮借」や「音通」
ほど定着した辞書見出しではなさそうです。
- [67] 「仮借」の辞書定義は、かなり限定的です。
-- [68] [CITE[コトバンク]]では、六書の一つとして
「同音の既成の漢字を意味に関係なく転用するもの」
と説明されています。つまり「仮借」は、基本的には字がない語に同音字を借りるという、
かなり由緒正しい定義を持っています。
-- [69] <https://kotobank.jp/word/%E4%BB%AE%E5%80%9F-44363>
- [48] 「通用音」は文字の代用ではなく、読みの側の語
-- [49] [CITE[コトバンク]]は「通用音」を「『かんようおん』の一般的ないい方」
とし、「慣用音」は 
「日本で広く使われている漢字音」と説明します。したがって 
「通用音」は、字の置換関係ではなく、読みが社会的に通っているという側の用語です。
-- [50] <https://kotobank.jp/word/通用音-570671>
-- [51] <https://kotobank.jp/word/慣用音-471673>
- [52] 「通用字体」は日本の国語施策の文脈
-- [53] [CITE[常用漢字表]]が各字種について採用した標準的な字体を指す、かなり制度的な用語です。
-- [54] 文化庁は「常用漢字表が各字種の通用字体として掲げる明朝体の一種を示した」と説明しています。 
-- [55] <https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/joyokanjihyo_sakuin/index.html>



* メモ