* 元号名

** 浄治・淨時

[27] 
[[貞治]]と思われるものが[DFN[浄時]]・[DFN[浄治]]と書かれた事例があります。


*** 用例

[ITEMS[ [[日時事例]]

- [10] [DATA(.label)[[CITE[水府志料]] 所収 [[文書]]]]
-- [11] 
「[DATA(.text)[[V[浄時元年二月十一日]]]]」 ([[崩し字]])
[SRC[>>9]]
- [12] [DATA(.label)[[CITE[水府志料]] 所収 [[文書]]]]
-- [13] 
「[DATA(.text)[[V[浄時元年二月十一日]]]]」 ([[崩し字]])
[SRC[>>9]]
- [22] 
[DATA(.label)[[DATA(.addr)[[[日本国]][[茨城県]][[久慈郡]][[大子町]]]] [[石井孝信]] 所蔵 [CITE[天明六年 大野村十二所明神由緒書上]]]]
-- [23] >>17 : [V[四三五]]
-- [24] 
「[V[一右十二所大明神神領之儀は当村ニて長百姓と申拾三[BR[]]軒半迚拾四軒重立候百姓御座候処右之百姓より神領[BR[]]相捧候様ニ被  仰付則神領之御証文  源義頼公様よ[BR[]]り頂戴仕候[RUBY[浄治][<ママ>]]元年より慶長五年迄は[SNIP[]]]]」
([[明朝体]])
[SRC[>>17]]
- [18] 
[DATA(.label)[[DATA(.addr)[[[日本国]][[茨城県]][[久慈郡]][[大子町]]]] [[菊池正勝]] 所蔵 [CITE[元禄十四年 近津家家伝文書並近世由緒書]]]]
-- [19] >>17 : [V[四三八]]
-- [20] 
「[V[[RUBY[源義頼][佐竹(ママ)]]        一通[BR[]]  浄治元年十二所神領寄附文書]]」
([[明朝体]])
[SRC[>>17]]

]ITEMS]

[31] 
>>10 >>12 は[[近世]]に収集された[[文書]]の[[写本]]ですが、
その原本が現存するかは不明です。

[21] >>20 >>24 は >>10 との関連を思わせます。

[29] 
この他に[[水戸藩]]系の研究者の[[浄治]]への言及 (>>461) 一件、
[[浄時]]への言及 (>>47) 一件があります。出典は不明ですが、
人脈を見ると、これらの用例との関係が深いと思われます。

*** 諸説

[28] 
二点の文書の[[近世]]写本と二点の[[近世]]由緒書中の用例、
二点の研究者による言及があり、
六点いずれも同一の系統に属すると思われます。
三点は[[浄時]]、三点は[[浄治]]とされています。

[30] 
解釈案を示すものはいずれも[[貞治]]に比定しており、
その根拠を示したものはいずれも[[音通]]と考えています。

-*-*-

[32] 
ところで、 >>20 >>24 は由緒書で、 >>10 はその根拠に当たるものと思われますが、
一応その信憑性を検討する必要はあると考えられます。

[35] 
発給者の[[源儀頼]] ([[源義頼]]) がどの人物を指すか不明です。
[[源氏]]で[[義頼]]と称する人物は何名かいたようですが、
当地でその時代に活動した者は不明です。

[36] 
[[貞治]]に比定したとき、貞治元年2月11日という日付も不審です。
[[貞治]]は[[北朝の元号]]で、[TIME[康安2(1362)年9月23日][1362-09-23]]の[[改元]]ですから、
7ヶ月の[[遡及年号]]となります。

-*-*-

[33] 
[[貞治]]が異なる[[文字]]で書かれた理由は、[[音通]]以外に[[字形]]も考慮する必要がありそうです。
>>16 は[[近世]]人が「貞治」と書いたものですが、それと隣の「浄時」を見比べると、
遠目にみればどことなく字形の雰囲気が似ているように思えてきます。
>>16 では[CH[浄]]も[CH[時]]も比較的明瞭に書かれていますが、
より崩して筆画を不明瞭に書けば、「貞治」に近づきそうに思えます。

[34] 
つまり、何次かの書写を経たとき、「貞治」の崩れた字形が「浄時」
を非常に崩して単純化した字形のように見えた段階があったのではないか、とも考えられます。

*** 研究史

[14] 
[[江戸時代]]中期の[[日本]][[水戸藩]]の研究者[[小宮山昌秀]]は、
>>10 
>>12
の写本に朱書で注釈しています。
[SRC[>>9]]

- [15] >>10 : [V[考按疑貞治]] ([[楷書]])
- [16] >>12 : [V[貞治カ]] ([[崩し字]])

[461] 
嘉永6年付の[[清宮秀堅]]による
[CITE[[V[新撰年表]]]][CSECTION[[V[凡例]]]]は、
[[貞治]]を[[浄治]]と表記するものがあり、
尚武の時代で[[音]]だけで書いたものに過ぎないと述べています。
[SRC[>>7]]
出典は示していません。

[47] 
[[明治時代]]刊行の[CITE@ja-JP[香取文書纂]]は、[[榮正]]用例への注釈で、

>
[VRLBOX[
永正ヲ榮正[BR[]]
ト書ルハ、[BR[]]
貞治ヲ淨時[BR[]]
ト書ルカ如[BR[]]
シ、
]VRLBOX]

と書いています。
[SRC[>>8]]

[48] 
[CITE[新撰年表]]でも提示される[[榮正]]の事例の引き合いに出されており、
要するに[[音通]]による異表記という指摘でしょう。
ただし、[CITE[新撰年表]]では[[浄治]]、
[CITE@ja-JP[香取文書纂]]では[[淨時]]と、第二字が違っています。


[4] 
昭和42年の
[CITE[日本私年号の研究]]
は、
研究史の紹介で
>>461
に触れて[[浄治]]を紹介していますが、
本編ではまったく触れていません。
[SRC[>>991]]

[25] 
[TIME[昭和59(1984)年][1984]]の史料集は、
>>22 >>18
を紹介して、[[ママ注]]を付加しています。
[SRC[>>17]]

[26] 
その後[[令和時代]]に至るまで、[[私年号研究]]の文脈で本格的に取り上げた事例は知られていません。

[REFS[

- [9] 
[CITE@ja-JP[水府志料 '''['''19''']''']], [[小宮山昌秀]], [TIME[2026-09-15T01:13:48.000Z]], [TIME[2026-10-18T06:01:25.306Z]] <https://dl.ndl.go.jp/pid/2576932/1/7?keyword=%E6%B7%A8%E6%99%82>
- [8] 
[CITE@ja-JP[香取文書纂 巻之7]], [[伊藤泰歳, 村岡良弼 校]], [TIME[明39-41][1908]], [TIME[2026-09-15T01:13:48.000Z]], [TIME[2026-10-18T04:22:05.712Z]] <https://dl.ndl.go.jp/pid/815205/1/55?keyword=%E6%A6%AE%E6%AD%A3> (要登録)
- [7] [[日本私年号一覧表]]
- [189] [CITE[日本私年号の研究]]
--- [991] [CSECTION[[V[第二章  日本の古代年号・私年号研究の沿革]]]],
pp.[V[一二]]-[V[二三]]
- [17] 
[CITE@ja-JP[大子町史 資料編 上巻 (原始・古代・中世・近世)]], [[大子町]], [TIME[1984.8][1984]], [TIME[2026-09-15T01:13:48.000Z]], [TIME[2026-10-18T06:06:22.780Z]] <https://dl.ndl.go.jp/pid/9643305/1/366?keyword=%E6%B5%84%E6%B2%BB> (要登録)

]REFS]

** 貞徳

[5] 
昭和42年の
[CITE[日本私年号の研究]]
は、
[[私年号]]ではない[[私年号的諸資料]]の章で、
立項せず本文で、
[CITE[長崎県史史料編一]]所収
[CITE[佐須郡御判物帳]]
が[[貞治]]→[[貞徳]], [[正平]]→[[元年]]と誤っていることを指摘しています。
[SRC[>>6]]

[REFS[

- [6] [CITE[日本私年号の研究]], p.[V[四九二]]

]REFS]

* 特殊な用例

[2] 
[CITE@ja-JP[群馬県史 資料編 8 (中世 4 金石文)]], [[群馬県史編さん委員会]], [TIME[1988.3][1988]], [TIME[2026-04-28T01:12:07.000Z]], [TIME[2026-05-21T14:59:03.677Z]] <https://dl.ndl.go.jp/pid/9644240/1/342?keyword=%E5%88%BB%E3%81%BF%E7%9B%B4%E3%81%97> (要登録)

[3] >>2 [[元号年]]と[[干支年]]の改刻

* メモ

@@
[1] 
[CITE@ja-JP[太平記註釈 下巻]], [[萩野由之 校, 国文学会]], [TIME[明34.9][1901]], [TIME[2026-03-18T03:11:57.000Z]], [TIME[2026-04-03T16:34:17.469Z]] <https://dl.ndl.go.jp/pid/877619/1/157?keyword=%E4%B9%9D%E6%9C%88%E6%99%A6%E6%97%A5>
